「割合の指導案を書かなくちゃいけない」「くらべる量ともとにする量が、子どもの中でごちゃごちゃになる」「公式は覚えたのに、文章題になると、かけるのか、わるのか分からなくなる」。5年生の算数を担当する先生から、よく聞く悩みです。
この記事では、東京書籍5年下の単元「割合」から、単元のいちばん最初の時間、シュートのうまさを比べる導入の時間の指導案を、子どもが主体的に話し合う授業を軸にまとめました。教材研究のポイント、単元計画、本時の展開と板書例、そのまま使えるワークシート、先生たちの実践を紹介します。

- 割合で子どもがつまずく理由(「差」でくらべてしまう、もとにする量が見えない)
- 単元の目標と評価規準
- 単元計画(全9時間)
- 本時(シュートのうまさを比べる導入)の指導案と板書例、ワークシート
- 5年生が主体的に話し合う5つの工夫と、先生たちの実践例
この記事は、全国の小学校教員が実践を学び合うオンラインコミュニティ「授業てらす」が、公開されている指導案や先生たちの実践をもとに編集しています(2026年10月時点)。
割合の教材研究
割合でつまずく理由は、計算そのものではなく、「何をもとにして比べているのか」が子どもに見えにくいことにあります。これまでの算数では、多い・少ないを「ひき算(差)」で比べることがほとんどでした。割合では、それを「何倍か(わり算)」で比べる見方に切りかえる必要があります。
導入の時間には、差でくらべると答えがずれる場面を用意すると、子どもが自分から「比べ方を変えないといけない」と気づきます。本時では、次のシュート練習の記録を使います。
シュートがいちばんうまいのはだれ?
見る数によって、答えが変わる
| 入った数で見る | はるとさん(20回中16回)がいちばん ポイント:シュートした数がちがうので、このままでは比べられない |
|---|---|
| 入らなかった数で見る | そうたさん(8回中6回、入らなかったのは2回)がいちばん ポイント:差で比べる考え。いちばん多く出る考えで、話し合いの出発点になる |
| 回数をそろえて見る | 40回にそろえると、ゆいさん28回、そうたさん30回、はるとさん32回 ポイント:公倍数でもとにする量をそろえる考え。はるとさんがいちばん |
| 何倍かで見る | 入った数はシュートした数の、ゆいさん0.7倍、そうたさん0.75倍、はるとさん0.8倍 ポイント:シュートした数を1とみる考え。割合の入口になる |
差で見るとそうたさん、何倍かで見るとはるとさん。この答えのずれが、割合を学ぶ必要感を生みます。
もう一つ大切なのは、4年生の「簡単な割合」とのつながりです。4年生では、もとにする大きさを1とみて「何倍か」で比べる学習をしています。5年生ではそれを、0.75倍のような小数で表す割合に広げます。4年生の算数は小数のわり算 指導案、算数の教材研究の進め方は算数の教材研究の仕方で紹介しています。
単元の目標と評価規準
学習指導要領(第5学年「C 変化と関係」(3) 二つの数量の関係)の内容をもとに、目標と評価規準を次のように設定します。
| 観点 | 評価規準(例) |
|---|---|
| 知識・技能 | ある二つの数量の関係と別の二つの数量の関係を比べる場合に割合を用いる場合があることを理解し、百分率を用いた表し方を知って、割合などを求めることができる。 |
| 思考・判断・表現 | 日常の事象における数量の関係に着目し、図や式などを用いて、二つの数量の関係の比べ方を考え、説明している。 |
| 主体的に学習に 取り組む態度 |
差で比べる方法と割合で比べる方法のちがいに気づき、割合を使って比べることのよさを、生活の場面に生かそうとしている。 |
※学習指導要領 算数 第5学年「C 変化と関係」(3) をもとにした例です。
単元計画(全9時間)
帯グラフ・円グラフを別の単元で扱う場合の、全9時間の例です。時数は学校の年間指導計画と指導書で確認してください。
| 時 | 主な学習活動 | 子どもが話す工夫 |
|---|---|---|
| 1時 (本時) |
シュートの記録から、いちばんうまい人の比べ方を考える | 「そうたさん?はるとさん?」を、差と倍で話し合う |
| 2時 | 割合の意味と求め方(くらべる量÷もとにする量)を知る。1より小さい割合も表す | 「何を1とみたの?」を毎回言葉にする |
| 3時 | 全体と部分、部分と部分の割合を求める | 同じ数でも、もとにする量が変わると割合が変わることを話す |
| 4時 | 百分率と歩合の意味を知り、小数で表した割合と行き来する | 生活の中の「%」を出し合う |
| 5時 | もとにする量と割合から、くらべる量を求める | 図を声に出して読む(「もとの0.6倍がくらべる量」) |
| 6時 | くらべる量と割合から、もとにする量を求める | □を使った式とわり算の式をくらべる |
| 7時 | 「20%引き」「10%増量」などの問題を考える | 「1−0.2」になるわけを図で説明する |
| 8時 | チラシや買い物の場面で、割合を使って判断する | 「どっちがお得?」を理由をつけて話す |
| 9時 | 学習をまとめ、ふり返る | 「はじめは差で比べていたけど、いまは〜」と伝える |
本時の指導案(割合の導入)
本時は、割合の単元の最初の時間です。差で比べる考えと、何倍かで比べる考えがぶつかる場面をつくり、「いちばんうまいのは、そうたさん? はるとさん?」を話し合います。割合の求め方を教えるより、シュートした数がちがうときは、そろえるか、何倍かで比べればよいことに子ども自身が気づくことを大切にします。
- 本時の目標:シュートした数と入った数の関係に着目し、シュートした数がちがうときの比べ方を、図や式を使って考え、説明する。
- めあて(子どもの言葉で):シュートした数がちがうとき、どうやって比べればいいか考えよう。
- 問題の例:シュート練習の記録です。ゆいさんは10回中7回、そうたさんは8回中6回、はるとさんは20回中16回入りました。いちばんシュートがうまいといえるのはだれでしょう。
| 段階 | 学習活動と主な発問 | 予想される子どもの反応 | 留意点・話す工夫 |
|---|---|---|---|
| 導入 (7分) |
①入った数だけを見せて、うまい人を予想する。 発問:いちばんうまいのはだれ? |
「16回入ったはるとさん」「でも、何回シュートしたか分からないとずるいよ」 | はじめはシュートした数をかくしておき、「何回中?」という声を引き出してから見せる。 |
| 展開1 (13分) |
②シュートした数を見せ、自分で比べ方を考える。 発問:そうたさん? はるとさん? 自分はどっち? |
「入らなかったのが2回だけのそうたさん」「はるとさんは20回もうって16回だから、うまい」 | ネームプレートで立場を黒板に表す。テープ図をかいたワークシートで考えさせる。 |
| 展開2 (17分) |
③比べ方を話し合う。 発問:入らなかった数で比べていいのかな? 発問:シュートした数をそろえると、どうなる? |
「40回にそろえると、そうたさん30回、はるとさん32回」「シュートした数をもとにすると、はるとさんは0.8倍」 | 「入らなかったのが2回でも、4回中2回と100回中2回はちがうよね」と極端な例をたずねる。そろえる考えと何倍かの考えを、図で結びつける。 |
| まとめ (8分) |
④比べ方をまとめる。 ⑤ゆいさんも同じ方法で比べる。 ⑥ふり返りを書く。 |
「シュートした数がちがうときは、そろえるか、何倍かで比べる」「差では比べられない」 | まとめは子どもの言葉で書く。「シュートした数を1とみる」という言葉を残し、次の時間の「割合」につなげる。 |
板書の例
- ゆい 10回中7回
- そうた 8回中6回
- はると 20回中16回
- 差では比べられない
- 40回にそろえる
- シュートした数を1とみる
板書では、左に記録、真ん中に「そうたさん?はるとさん?」という対立、右に分かったことを書きます。3人のテープ図は、シュートした数の長さをそろえてかき直した図も並べると、「そろえる」と「1とみる」が同じ考えであることが目で見て分かります。
ワークシート
本時で使えるワークシートです。3人の記録の表、自分の立場を選ぶ欄、比べ方を書く欄、ふり返りの欄があります。印刷してそのまま使えます(A4)。

5年生が主体的に話し合う5つの工夫
「ぼくは、〜をもとにして比べました。わけは、〜だからです。」
「〇〇さんは差で比べたけど、わたしは〜倍で比べました。」
つまずきやすいポイントと手立て
| つまずき | 手立て |
|---|---|
| 差で比べてしまう | 「4回中2回」と「100回中2回」のような極端な例で、差だけでは比べられないことを確かめる。 |
| もとにする量と、くらべる量を取りちがえる | 問題文の「〜の」「〜をもとにすると」に線を引き、関係図に「もと」「くらべる」と書きこむ。 |
| 「1.5倍」だからかけ算、と決めつける | 関係図を声に出して読み、「□の1.5倍が12」なのか「12の1.5倍が□」なのかを確かめる。 |
| 70%を、そのまま70倍として計算する | 百分率は、もとにする量を100とみた表し方であることを確かめ、0.7に直してから式にする。 |
公式だけに頼ると、どの数をどこに入れるか分からなくなります。単元を通して図をかいてから式を立てる流れを大切にしましょう。
先生たちの実践例
実践1|楽器の定員と希望者で比べる(岡山県総合教育センター)
岡山県総合教育センターが公開している「割合」の指導例では、学習発表会の楽器決めを題材にしています。はじめは希望者の数だけを見せ、子どもから「定員が分からないと比べられない」という声を引き出します。差(希望がかなわない人数)が同じ2人でも、定員が4人と80人では意味がちがうことを図で確かめ、第2時で定員を1とみる割合につなげています。
本時の導入で、シュートした数をかくして入った数だけを見せてみましょう。「何回中?」という声が、もとにする量への入口になります。
実践2|関係図を声に出して読む(富山県の小学校)
小学館「みんなの教育技術」で紹介されている前田正秀先生(富山県射水市立大島小学校)の実践では、もとにする量を求める時間に、子どもといっしょに関係図をかきながら問題場面を確かめています。図がかけたら、「きのうの1.5倍がきょう」「□人の1.5倍が12人」と全員で声に出して読み、関係をつかませています。学び合いでは、12×1.5とした誤答もあえて取り上げ、何がもとにする量なのかを話し合っています。

よくある質問
Q. 割合の公式(くもわ)は教えたほうがいいですか?
A. 公式から入ると、どの数がもとにする量かを考えなくなりがちです。まず関係図をかいて「もとの□倍がくらべる量」と読めるようにし、式はそこから導きましょう。
Q. 割合の単元は何時間扱いが多いですか?
A. 公開されている指導案では、全9〜13時間で計画している例が見られます。帯グラフ・円グラフを同じ単元で扱うかどうかで時数が変わるので、学校の年間指導計画と指導書で確認してください。
Q. 4年生の「簡単な割合」とは何がちがいますか?
A. 4年生では、もとにする量を1とみて「2倍」「3倍」のように整数で表せる場面を扱います。5年生では、0.75倍のような小数で表す割合や、百分率・歩合に広げていきます。
Q. 図は、数直線とテープ図のどちらを使えばいいですか?
A. 導入では、シュートした数と入った数の長さが見えるテープ図が分かりやすいです。くらべる量やもとにする量を求める時間からは、上に人数、下に割合を書く数直線(関係図)に移っていくと、式を立てやすくなります。

