「分数のわり算の指導案を書かなくちゃいけない」「『ひっくり返してかける』は覚えるけれど、なぜそうなるのかは説明できない」「わる数とわられる数を逆にしてしまう子がいる」。6年生の算数を担当する先生から、よく聞く悩みです。
この記事では、東京書籍6年の単元「分数のわり算」から、分数÷分数の計算の仕方を考える時間の指導案を、子どもが主体的に話し合う授業を軸にまとめました。教材研究のポイント、単元計画、本時の展開と板書例、そのまま使えるワークシート、先生たちの実践を紹介します。

- 「ひっくり返してかける」で終わらせないための教材研究のポイント
- 単元の目標と評価規準
- 単元計画(全12時間)
- 本時(分数÷分数の計算の仕方)の指導案と板書例、ワークシート
- 6年生が主体的に話し合う5つの工夫と、先生たちの実践例
この記事は、全国の小学校教員が実践を学び合うオンラインコミュニティ「授業てらす」が、公開されている指導案や先生たちの実践をもとに編集しています(2026年10月時点)。
分数のわり算の教材研究
分数のわり算は、「わる数の逆数をかける」という計算の仕方そのものは簡単です。むずかしいのは、なぜ逆数をかければよいのかを、子どもが自分の言葉で説明できるようにすることです。手順だけを覚えると、わる数とわられる数のどちらをひっくり返すのかがあいまいになり、つまずきにつながります。
本時では、次のペンキの問題を使います。3/4dLで2/5㎡ぬれるペンキがあります。このペンキ1dLでは、何㎡ぬれますか。(式は 2/5÷3/4、答えは 8/15㎡)
2/5÷3/4 の計算の仕方
どの考えも、これまでに習ったことが使える
| 1/4dL分を もとにする |
3/4dLは1/4dLの3つ分。1/4dLでぬれるのは 2/5÷3。1dLはその4つ分なので 2/5÷3×4=8/15 ポイント:面積図・数直線で考えやすい。単位分数のいくつ分で見る考え |
|---|---|
| わり算のきまり を使う |
わる数とわられる数に同じ数(4)をかけても商は同じ。(2/5×4)÷(3/4×4)=8/5÷3=8/15 ポイント:5年までの「わり算のきまり」を、わる数を整数にするために使う |
| わる数を1に する |
わる数とわられる数に4/3をかけると、わる数が1になる。(2/5×4/3)÷(3/4×4/3)=8/15÷1 ポイント:「逆数をかける」につながる考え |
| よくあるまちがい | 2/5の逆数をかけて 5/2×3/4=15/8 とする ポイント:1dLは3/4dLより1/4dL多いだけなので、答えは2/5㎡より少し大きいくらいのはず。1㎡をこえるのはおかしいと気づける |
大切なのは、計算に入る前に答えの大きさを見積もることです。3/4dLより1dLのほうが多いので、1dLでぬれる面積は2/5㎡より大きくなるはずです。この見積もりがあると、「わる数が1より小さいと、商はわられる数より大きくなる」ことや、計算のまちがいに子ども自身が気づけます。
5年生の算数は割合 指導案(シュートのうまさを比べる導入)、算数の教材研究の進め方は算数の教材研究の仕方で紹介しています。
単元の目標と評価規準
学習指導要領(第6学年「A 数と計算」(1) 分数の乗法、除法)の内容をもとに、目標と評価規準を次のように設定します。
| 観点 | 評価規準(例) |
|---|---|
| 知識・技能 | 除数が分数の場合の除法の意味について理解し、分数の除法の計算ができる。整数の場合と同じ関係や法則が成り立つことを理解している。 |
| 思考・判断・表現 | 数の意味と表現、計算について成り立つ性質に着目し、分数の除法の計算の仕方を、図や式を使って多面的に考え、説明している。 |
| 主体的に学習に 取り組む態度 |
分数の除法の計算の仕方を振り返り、よりよい方法を考えたり、学習したことを生活や学習に生かそうとしたりしている。 |
※学習指導要領 算数 第6学年「A 数と計算」(1) をもとにした例です。
単元計画(全12時間)
公開されている指導案では、分数のわり算を全10〜14時間で計画している例が見られます。ここでは、全12時間の例を紹介します。時数は学校の年間指導計画と指導書で確認してください。
| 時 | 主な学習活動 | 子どもが話す工夫 |
|---|---|---|
| 1時 | 分数÷整数の計算の仕方を考える(ふり返り) | 面積図で「何等分したか」を説明する |
| 2時 | ペンキの場面で、わる数が分数のときも、わり算の式になることを考える | 数直線を使って、式の理由を話す |
| 3時 (本時) |
2/5÷3/4の計算の仕方を考える | 「答えは2/5㎡より大きい?小さい?」を見積もってから話し合う |
| 4時 | 分数÷分数の計算の仕方をまとめ、練習する(わる数の逆数をかける) | 「なぜ逆数をかけるの?」を自分の言葉で説明する |
| 5時 | 計算のとちゅうで約分する | 約分のよさを話し合う |
| 6時 | 整数÷分数、帯分数のわり算をする | 整数や帯分数を分数になおすわけを話す |
| 7時 | わる数と商の大きさの関係を調べる | 「わる数が1より小さいと、商は…」をきまりにする |
| 8時 | 小数と分数がまじった乗除の計算をする | 分数にそろえるよさを話す |
| 9・10時 | 分数の倍、もとにする量を求める問題を考える | 図をかいてから式を立てる |
| 11時 | 練習 | まちがえやすい問題を出し合う |
| 12時 | 学習をまとめ、ふり返る | 「はじめは〜だったけど、いまは〜」と伝える |
本時の指導案(分数÷分数)
本時は、分数÷分数の計算の仕方を初めて考える時間です。最初に「1dLでぬれる面積は、2/5㎡より大きい? 小さい?」と見積もらせ、そのあとで計算の仕方を話し合います。逆数をかけることを教えるより、これまでに習った考えを使えば計算できることに子ども自身が気づくことを大切にします。
- 本時の目標:わる数を整数や1にする考えなど、既習の計算のきまりに着目し、分数÷分数の計算の仕方を図や式を使って考え、説明する。
- めあて(子どもの言葉で):分数でわる計算の仕方を、習ったことを使って考えよう。
- 問題の例:3/4dLで2/5㎡ぬれるペンキがあります。このペンキ1dLでは、何㎡ぬれますか。
| 段階 | 学習活動と主な発問 | 予想される子どもの反応 | 留意点・話す工夫 |
|---|---|---|---|
| 導入 (8分) |
①問題を読み、式を立てる。 ②答えを見積もる。 発問:1dLでぬれる面積は、2/5㎡より大きい? 小さい? |
「2/5÷3/4」「3/4dLより1dLのほうが多いから、大きくなる」「わり算なのに大きくなるの?」 | 大きい・小さいの立場をネームプレートで表す。見積もりの理由を数直線で確かめる。 |
| 展開1 (12分) |
③計算の仕方を自分で考える。 発問:これまでに習ったことで、使えそうなことは? |
「1/4dL分を先に出す」「わり算のきまりで、わる数を整数にする」「面積図をかいてみる」 | 面積図と数直線のあるワークシートを配る。考えが止まった子には「3/4dLは1/4dLのいくつ分?」と声をかける。 |
| 展開2 (17分) |
④考えを発表し、くらべる。 発問:どの考えにも共通していることは? |
「どれも8/15になった」「わる数を整数や1にしている」「結局、4/3をかけている」 | 15/8 となった誤答も取り上げ、見積もりと比べておかしさに気づかせる。式と図を線で結んで板書する。 |
| まとめ (8分) |
⑤計算の仕方をまとめる。 ⑥ 3/5÷2/7 で確かめる。 ⑦ふり返りを書く。 |
「わる数を1にするには、逆数をかければいい」「わる数の逆数をかけると計算できる」 | まとめは子どもの言葉で書く。「なぜ逆数をかけるのか」をふり返りに書かせ、次の時間につなげる。 |
板書の例
- 3/4dLで 2/5㎡
- 1dLでは なん㎡?
- 式 2/5÷3/4
- 答えは 8/15㎡
- 2/5㎡より 大きい
- わる数を 1にすると わりやすい
板書では、左に問題と見積もり、真ん中に考え方、右に分かったことを書きます。面積図の式と、わり算のきまりの式を線で結んで同じ「×4」「÷3」が出てくることを見せると、どの考えも同じことをしていると目で見て分かります。
ワークシート
本時で使えるワークシートです。見積もりの欄、面積図と数直線、考え方を書く欄、確かめの問題、ふり返りの欄があります。印刷してそのまま使えます(A4)。

6年生が主体的に話し合う5つの工夫
「ぼくは、わる数を〜にして考えました。わけは、〜だからです。」
「〇〇さんの考えと、△△さんの考えは、どちらも〜しているところが同じです。」
つまずきやすいポイントと手立て
| つまずき | 手立て |
|---|---|
| わられる数をひっくり返してしまう | 答えを見積もってから計算し、見積もりと合っているかを確かめる習慣をつける。 |
| わり算なのに答えが大きくなるのが納得できない | 数直線で「1dLのほうが3/4dLより多い」ことを確かめ、わる数が1より小さいと商が大きくなることを見せる。 |
| 逆数の意味があいまい | 「かけると1になる数」として、2/5×5/2=1 などを確かめてから使う。 |
| 文章題で、かけ算かわり算か分からない | 数直線をかき、「1dLあたり」を求めるのか、「□dLぶん」を求めるのかを言葉で確かめる。 |
「ひっくり返してかける」と手順だけを先に教えると、場面に合った式が立てられなくなりがちです。単元を通して見積もり→図→式の順番を大切にしましょう。
先生たちの実践例
実践1|かけ算の考え方を、わり算でも使う(横浜市の小学校)
横浜市算数研究会で提案された帆足雄斗先生(横浜市立上末吉小学校)の指導案では、分数のかけ算とわり算を一つの単元にまとめ、かけ算で使った考え方をわり算でも使えるようにしています。真分数÷真分数の時間には、前の時間のかけ算で出た3つの考えをふり返ってから、わる数に着目して計算の仕方を考えています。わる数とわられる数に同じ数をかける「わり算のきまり」がいちばん使いやすいことに、子どもたちが自分で気づいています。
本時の前に、分数のかけ算で使った考え方を掲示しておきましょう。「かけ算のときみたいにできないかな?」という声が、わり算の見通しになります。
実践2|1/3を基準にして考える(東京都練馬区の小学校)
練馬区の小学校で公開されている指導案では、分数のかけ算の時間に、1dLで4/5㎡ぬれるペンキ2/3dLの面積を考えています。子どもたちは、数直線や面積図から「まず1/3dL分を出して、その2つ分」と考え、どの考えも1/3を基準にしていることを話し合っています。この「単位分数を基準にする」考えは、分数のわり算でもそのまま使えます。

よくある質問
Q. 「ひっくり返してかける」は、最初に教えてもいいですか?
A. 手順を先に教えると、わる数とわられる数のどちらをひっくり返すのかがあいまいになりがちです。まずは面積図やわり算のきまりで計算し、そのあとで「どの考えも、わる数の逆数をかけている」とまとめると、理由といっしょに覚えられます。
Q. 分数のわり算の単元は何時間扱いが多いですか?
A. 公開されている指導案では、全10〜14時間で計画している例が見られます。分数のかけ算と同じ単元で扱う場合もあるので、学校の年間指導計画と指導書で確認してください。
Q. 面積図と数直線は、どちらを使えばいいですか?
A. 計算の仕方を考える時間は、1/4dL分が目で見える面積図が分かりやすいです。式を立てる時間や文章題では、数直線のほうが「1dLあたり」を求める関係をつかみやすくなります。両方をワークシートにのせ、子どもが選べるようにするのもよい方法です。
Q. わる数が1より小さいと商が大きくなることは、どう教えればいいですか?
A. 本時のように、計算の前に答えを見積もる活動を続けると、自然に気づく子が増えます。7時ごろに、わる数を変えて商の大きさを調べ、きまりとしてまとめましょう。

