海の命 指導案|子どもが主体的に話し合う単元計画と本時の展開【光村6年 国語】

「海の命の指導案を書かなくちゃいけない」「太一がクエをうたなかった理由を聞いても、同じような答えばかりになる」「6年生が、自分の生き方とつなげて話し合うにはどうすればいいの?」。6年生の国語で「海の命」を担当する先生から、よく聞く悩みです。

この記事では、光村図書6年の物語「海の命」(立松和平 作)の指導案を、子どもが主体的に話し合う授業を軸にまとめました。単元計画、山場(5場面)の本時の展開と板書例、先生たちの実践までを紹介します。

放課後の職員室で、国語の教科書と青い海や岩場の写真を広げ、海の命の授業準備をする先生
この記事でわかること

  • 「海の命」の教材研究のポイント(場面の構成と、太一に影響を与えた人物)
  • 単元の目標と評価規準
  • 単元計画(全8時間)と、人物相関図の使いどころ
  • 山場(5場面)の本時の指導案と板書例
  • 6年生が主体的に話し合うための5つの工夫と、先生たちの実践例

この記事は、全国の小学校教員が実践を学び合うオンラインコミュニティ「授業てらす」が、公開されている指導案や先生たちの実践をもとに編集しています(2026年10月時点)。教科書の本文は掲載していません。

目次

海の命の教材研究のポイント

「海の命」は、漁師の父を海でなくした少年・太一が、一人前の漁師に成長していく物語です。父をやぶった巨大なクエ(瀬の主)を追い続けた太一は、ついにその瀬の主と向き合いますが、もりを打ちませんでした。太一の生き方を変えたのは何だったのかが、この物語の大きな問いです。

海の命の場面構成

場面ごとの「話したくなるポイント」

1場面 もぐり漁師の父が、瀬の主に挑み、海で命を落とす
ポイント:父はどんな漁師だったのか
2場面 太一が、与吉じいさに弟子入りし、漁を学ぶ
ポイント:与吉じいさの漁のしかたと、父の漁のちがい
3場面 与吉じいさが亡くなり、太一は村一番の漁師になっていく
ポイント:与吉じいさの死を、太一はどう受け止めたか
4場面 母の心配を感じながら、太一は父が死んだ瀬にもぐる
ポイント:母の思いは、太一にどう影響したか
5場面
(山場)
太一が瀬の主と出会うが、もりを打たない
ポイント:太一は、なぜクエをうたなかったのか
6場面 太一は村の娘と結婚し、おだやかに暮らす
ポイント:瀬の主のことを、だれにも話さなかったのはなぜか
読みの軸は「太一に影響を与えた人物と、太一が選んだ生き方」

この教材の強みは、父、与吉じいさ、母という3人が、それぞれちがう形で太一に影響を与えていることです。5場面で太一がクエをうたなかった理由を考えるとき、「父の生き方」「与吉じいさの教え」「母の思い」のどれを根拠にするかで、子どもの考えが自然に分かれます。

物語文の教材研究の進め方は、物語文の教材研究の仕方|小学校国語で使える7ステップと先生たちの実践例で、1年生の物語はくじらぐも 指導案で、5年生の物語は大造じいさんとガン 指導案で紹介しています。大造じいさんの「見方の変化」を読んだ経験は、太一の「生き方の変化」を読むときに生きてきます。

単元の目標と評価規準

学習指導要領(5・6年「C 読むこと」)の指導事項をもとに、単元名を「人物の生き方について考え、自分の考えを深めよう」(例)として、目標と評価規準を次のように設定します。

観点 評価規準(例)
知識・技能 思考に関わる語句の量を増し、話や文章の中で使うとともに、語感や言葉の使い方に対する感覚を意識して、語や語句を使っている。
思考・判断・表現 「読むこと」において、登場人物の相互関係や心情などについて、描写を基に捉えている。
「読むこと」において、文章を読んで理解したことに基づいて、自分の考えをまとめている。
主体的に学習に
取り組む態度
進んで太一と周りの人物との関係を捉え、学習の見通しをもって、人物の生き方について自分の考えをまとめようとしている。

※学習指導要領 国語 第5学年及び第6学年の「知識及び技能」(1)オ、「思考力、判断力、表現力等」C読むこと イ・オ をもとにした例です。

単元計画(全8時間)

公開されている指導案では、6〜11時間で計画している例が見られます。ここでは、最後に「人物の生き方について考えたことを伝え合う」ことをゴールにした8時間の計画を紹介します。立松和平のほかの作品や、命をテーマにした本を並行読書で読み進めておきます。

次・時 主な学習活動 子どもが話す工夫
第1次
1時
範読を聞き、初めの感想と「みんなで考えたい問い」を書く 心に残った場面と疑問を、ペアで伝え合う
第1次
2時
問いを整理して学習問題を決め、6つの場面と登場人物を確かめる 友達の問いに「それ、考えたい」と反応し合う
第2次
3時
1・2場面:父と与吉じいさ、二人の漁師の生き方を比べる 二人の漁のしかたのちがいを、表にして話し合う
第2次
4時
3・4場面:与吉じいさの死と母の思いを読み、人物相関図にまとめる 太一への影響を矢印で表し、グループで比べる
第2次
5時
(本時)
5場面(山場):クエをうたなかった太一について考える 「一人前の漁師になった? なっていない?」と立場を決めてから話し合う
第2次
6時
6場面:瀬の主のことをだれにも話さなかった理由と、題名の意味を考える 「海の命」とは何かを、自分の言葉で言い表す
第3次
7時
太一の生き方について、自分の考えを文章にまとめる 下書きを読み合い、根拠が伝わるかアドバイスし合う
第3次
8時
考えを伝え合い、自分の生き方とつなげて単元をふり返る 自分と違う考えから気づいたことを伝える
4時の人物相関図は、本時の大切な土台になります。太一に向かう矢印が3本(父・与吉じいさ・母)そろっていると、本時でクエをうたなかった理由を考えるとき、子どもが根拠を選びやすくなります。

本時の指導案(5場面・山場)

本時は、太一がついに瀬の主と向き合い、もりを打たずに終わる山場の場面です。「クエをうたなかった太一は、一人前の漁師になったといえるか」という判断の問いを投げかけることで、6年生が叙述と人物の関係を根拠に話し合えます。

  • 本時の目標:瀬の主をうたなかった太一について、太一と周りの人物との関係や描写を根拠に自分の考えをもち、友達と伝え合う。
  • めあて(子どもの言葉で):クエをうたなかった太一は、一人前の漁師に なったのだろうか。
段階 学習活動と主な発問 予想される子どもの反応 留意点・話す工夫
導入
(5分)
①前時の人物相関図をふり返り、めあてを確かめる。 「太一は、父も与吉じいさも尊敬している」 相関図を掲示し、太一に影響を与えた3人を確認する。
展開1
(10分)
②5場面を音読し、クエと出会ってからの太一の行動と心の動きに線を引く。
発問:太一の気持ちは、どこで、どう変わった?
「うとうとしたのに、うてなかった」「泣きそうになった」「クエを父だと思うことにした」 行動と気持ちの変化の順番を、叙述にもどって確かめさせる。
展開2
(20分)
③立場を決めて、ペア → 全体で話し合う。
発問:クエをうたなかった太一は、一人前の漁師になったといえる?
「与吉じいさの教えのように、必要な分だけとる漁師になったから、なった」「父の敵をうてなかったのだから、まだなっていない」「うたなかったことで、本当の一人前になった」 ネームプレートで立場を示させる。「一人前」の意味を、父と与吉じいさの漁のしかたとつなげて考えさせる。
まとめ
(10分)
④話し合いをふまえて、もう一度自分の考えを書く。 「太一は、クエをうたなかったことで、与吉じいさのような漁師になったと思う」 考えが変わった子、深まった子を紹介し、次時の6場面と題名につなげる。

板書の例

クエをうたなかった太一は、一人前の漁師に なったのだろうか
太一に影響を与えた人
  • 父:瀬の主に いどんだ 漁師
  • 与吉じいさ:必要な分だけ とる 漁師
  • 母:太一を 心配する
だれの 生き方を 選んだ?
一人前の漁師に?
なった
⇔
なっていない
(ネームプレート)
5場面の太一
  • ずっと 追い求めていた クエと 出会う
  • 泣きそうに なる
  • クエを 父だと 思うことに する
  • もりを 打たない
敵 → 海の 命

板書では、左に「太一に影響を与えた人」、右に「5場面の太一」を並べ、真ん中に「一人前の漁師に?」を置きます。左の3人の生き方と右の太一の行動を線で結びながら話し合うと、「だから一人前になった」「でもまだ」と根拠をもって意見を言えるようになります。

6年生が主体的に話し合う5つの工夫

1「どっち?」と立場を選ばせる「一人前の漁師になった? なっていない?」のように選べる問いにすると、どの子も自分の考えをもって話し合いに入れます。
2人物相関図で影響を見える化する太一に向かう矢印に「何を教えたか」を書き込むと、本時で根拠を選ぶときの手がかりになります。
3初めの疑問から学習問題をつくる「なぜクエをうたなかったの?」など、子どもの疑問から問いをつくると、最後まで目的をもって読み進められます。
4言葉の意味を自分の言葉で言いかえる「一人前」「海の命」など、物語の中心となる言葉を自分の言葉で言いかえると、考えのちがいがはっきりします。
5自分の生き方とつなげる単元の最後に「自分が大切にしたいこと」を書くと、6年生らしい深い学びになります。
使える話型
「わたしは、〜だと 考えます。根拠は、〇場面の 〜という 表現です。」
「〇〇さんの 考えに つけ加えて、〜」「〇〇さんとは ちがって、〜」

先生たちの実践例3選

実践1|初めの疑問から学習問題をつくり、関係図で読む(原猛先生)

みんなの教育技術では、長野県駒ケ根市立中沢小学校の原猛先生が、6時間の単元を紹介しています。初めの感想で出た「どうして太一は父の敵のクエを殺さなかったのか」といった疑問をもとに学習問題を設定します。1人1台端末のホワイトボードアプリで、人物像や人物どうしの影響を付箋と矢印でまとめた関係図をつくり、全体やグループで共有しています。

まねするなら
関係図の矢印に「太一に何を教えたか」を一言ずつ書かせると、本時で「だれの生き方を選んだのか」を話し合うときにそのまま使えます。

実践2|「一人前の漁師になれなかったのか」を話し合う(練馬区の小学校)

東京都練馬区の小学校の指導案(全8時間)では、5場面を本時として、「太一が泣きそうになった理由」を読み取ったあと、「クエを殺さなかった太一は、一人前の漁師になれなかったのか」という問いで話し合っています。一人読みとクラス全体の話し合いの間にペア対話をはさみ、交互に短く話す、相手の意見と比べながら聞く、などのルールで、全員が考えを話せるようにしています。

実践3|太一の葛藤に気づく話し合い(小田原市立三の丸小学校)

神奈川県の小田原市立三の丸小学校の指導案(全11時間)では、クエを殺さなかった太一の気持ちを考える場面で、クエをとりたいのにとれずにもがく、太一の葛藤に気づくことをねらっています。座席表や疑問カードでクラスの疑問を共有し、主題に関わる言葉が出たときには「みんなはどう読む?」と問い返して、話し合いの焦点をしぼっています。

6年生の国語の授業で、机を寄せ合って教科書を指さしながら意見を言い合う子どもたちと、見守る先生

よくある質問

Q. 海の命は何時間扱いが多いですか?

A. 公開されている指導案では、6〜11時間で計画している例が見られます。学校の年間指導計画と、教科書会社の指導書で時数を確認してください。

Q. 「海の命」で作者が伝えたいことは何ですか?

A. 決まった一つの答えはありません。自然とともに生きること、命のつながり、人から受けついだ生き方など、子どもによってとらえ方が分かれます。叙述を根拠に自分の考えをもてているかを大切にしましょう。

Q. 言語活動は何がおすすめですか?

A. 人物の生き方について考えたことを文章にまとめ、伝え合う活動が基本です。人物相関図をつくる活動や、自分の生き方とつなげて感想をまとめる活動もよく行われています。

Q. ワークシートや指導案に本文を載せてもいいですか?

A. 授業で使うために必要な範囲であれば、著作権法で認められています。ただし、学校のホームページなど、外に公開する場合は扱いが変わるので注意しましょう。

参考にした情報

授業てらすは、全国の小学校教員が実践を学び合うオンラインコミュニティです

海の命の授業づくりも、一人で悩む必要はありません。全国の先生の授業動画や指導案にふれながら、子どもが主体的に話し合う授業を一緒につくっていきませんか。

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