「物語文の教材研究、何から手をつければいいかわからない」「指導書を読んで終わりになってしまう」「発問が思いつかない」。国語の物語文の授業を前にして、こんな悩みを抱える先生は少なくありません。
この記事では、小学校国語の物語文の教材研究の仕方を、「素材研究 → 教材研究 → 指導法研究」の3段階と、明日から使える7つのステップに整理しました。学年ごとに見るポイント、そのまま使える教材研究メモ、ベテランの先生たちの実践もあわせて紹介します。

- 物語文の教材研究の全体像(素材研究・教材研究・指導法研究)
- 物語文の教材研究の7ステップ
- 低・中・高学年で、物語のどこに注目すればよいか
- そのまま使える教材研究メモ(「ごんぎつね」の記入例つき)
- 先生たちの実践例5つと、発問づくり・時短のコツ
この記事は、全国の小学校教員が実践を学び合うオンラインコミュニティ「授業てらす」が、公開されている先生や教育機関の実践をもとに編集しています(2026年10月時点)。
物語文の教材研究とは?3つの段階
教材研究とは、授業の前に教師が教材を深く読み、「この教材で子どもにどんな力をつけるか」「そのためにどう授業するか」を決めることです。国語科では、教材研究を次の3つの段階に分けて考える方法がよく知られています。
物語文の教材研究は3つの段階で進める
いきなり発問を考えず、まず「読む」ことから始めます
島根県教育センターの資料でも、まず教師自身が素材と向き合い、主人公・山場・作品の魅力・主題などを「自分の言葉で明解に書き出す」ことが勧められています。いきなり発問や板書を考える前に、一人の読者として作品を読み込むことが出発点です。
説明文の教材研究の進め方は、説明文の教材研究の仕方|小学校国語で使える7ステップと先生たちの実践例で紹介しています。
始める前に:指導書は最後に読む
教材研究というと、まず教師用指導書を開きたくなります。しかし、多くの実践者が勧めているのは、指導書や赤刷りの解説を見る前に、子どもと同じように本文を読むことです。
先に指導書を読むと、その解釈が頭に入ってしまい、子どもがどこでつまずくか、どこで驚くかが見えにくくなります。自分で読んで気づいたことを書き出してから指導書を読むと、「自分の読みとどこが同じで、どこが違うか」がわかり、指導書がずっと役に立つ資料になります。
物語文の教材研究の仕方7ステップ
ここからは、実際の進め方を7つのステップで紹介します。1〜6が素材研究と教材研究、7が指導法研究にあたります。
物語文の教材研究 7つのステップ
1〜6が素材研究・教材研究、7が指導法研究です
ステップ1|子どもになって読み、初読の感想を書く
最初の1回は、教師としてではなく一人の読者として読みます。読み終えたら、心に残ったこと、疑問に思ったこと、「えっ」と驚いたところをメモしておきましょう。この初読の感想は、子どもが同じ場面でどう感じるかを予想する手がかりになります。
ステップ2|くり返し読み、書き写す
音読、黙読、声に出さずに口を動かす微音読など、読み方を変えて何度も読みます。全文を書き写したり、拡大コピーに色鉛筆で線を引いたりすると、1回読んだだけでは気づかなかった言葉の選び方やくり返しが見えてきます。子どもにとって難しい言葉や、表現の美しいところにも印をつけておきます。
ステップ3|設定をとらえる(時・場・人物・語り手)
物語のはじめで、いつ、どこで、だれが、どんな状態なのかを確かめます。とくに大事なのが、中心人物(いちばん大きく変わる人物)と、対人物(中心人物に影響を与える人物)、そして語り手がどこから語っているか(一人称か三人称か、だれの心の中まで語るか)です。
ステップ4|構成をとらえる(場面・山場・結末)
物語を場面に分け、「はじめ(設定)」「なか(出来事・山場)」「おわり(結末)」の組み立てを確かめます。事件が始まるきっかけ(発端)と、中心人物の気持ちや見方がいちばん大きく変わるところ(山場・クライマックス)を見つけることがポイントです。
ステップ5|中心人物の変容を「一文」で書く
「(中心人物)が、(出来事)によって、(どう変わる)物語」という一文で、物語をまとめてみます。この一文が書けると、物語の骨組みがはっきりします。うまく書けないときは、どこかの読みがまだあいまいだというサインです。
ステップ6|主題と表現の工夫を考える
中心人物の変容から、「この物語がいちばん語りかけてくること(主題)」を自分の言葉で書きます。あわせて、情景描写、くり返し、比喩、色や音の表現など、作品ならではの表現の工夫を探します。情景の描写は、人物の気持ちと結びついていることが多くあります。
ステップ7|指導事項と結びつけて、発問・活動を決める
最後に、学習指導要領の指導事項と単元のねらいを確認し、「この教材で、どんな力をつけるか」を一つにしぼります。そのうえで、中心となる発問、学習活動、板書の計画を考えます。ここで初めて指導書を開き、自分の読みと比べると効果的です。
学年別に注目したいポイント
同じ物語文でも、学年によってつけたい力が違います。学習指導要領の「読むこと(文学的な文章)」の指導事項をもとに、学年ごとに注目したいポイントを整理しました。
| 学年 | 内容をとらえる | 想像して読む | 教材研究で見るところ |
|---|---|---|---|
| 低学年 (1・2年) |
場面の様子や登場人物の行動など、内容の大体を捉える | 場面の様子に着目して、登場人物の行動を具体的に想像する | だれが、何をしたか。行動を表す言葉と、くり返しのリズム |
| 中学年 (3・4年) |
登場人物の行動や気持ちなどについて、叙述を基に捉える | 気持ちの変化や性格、情景について、場面の移り変わりと結び付けて具体的に想像する | 中心人物の気持ちがどこで、何によって変わるか。情景との結びつき |
| 高学年 (5・6年) |
登場人物の相互関係や心情などについて、描写を基に捉える | 人物像や物語の全体像を具体的に想像したり、表現の効果を考えたりする | 人物どうしの関係の変化、語り手の視点、表現の工夫とその効果 |
※「内容をとらえる」「想像して読む」の欄は、小学校学習指導要領(平成29年告示)国語の「C 読むこと」の指導事項をもとにしています。
1年生の物語の具体例として、くじらぐも 指導案|子どもが主体的に話す単元計画と本時の展開【光村1年】で、単元計画・本時の展開・板書例を紹介しています。学年別の指導案は小学校国語 指導案一覧にまとめています。
教材研究メモ(記入例つき)
7つのステップで考えたことは、次の5項目だけメモしておけば十分です。下は4年生の「ごんぎつね」での記入例です。読み方は一つではないので、ご自身の読みで書き換えて使ってください。
教材研究メモ(1枚にまとめる型)
記入例:「ごんぎつね」(4年)※読みの一例です
| 設定 | むかしの山の中の村。ひとりぼっちの小ぎつね「ごん」と、兵十 |
|---|---|
| 山場 | 兵十がごんをうち、くりや松たけを届けていたのがごんだったと気づく |
| 変容の一文 | いたずらばかりしていたごんが、つぐないを続けるうちに、兵十にわかってほしいと願うようになる物語 |
| つける力 | 気持ちの変化を、場面の移り変わりと結び付けて想像する |
| 中心発問 | 最後の場面は、なぜ兵十の側から語られているのだろう |
先生たちの実践例5選
物語文の教材研究について、公開されている先生たちの実践から、すぐにまねしやすいものを紹介します。
実践1|目的を変えて3回読む(多賀一郎先生)
教職30年以上の多賀一郎先生は、「みんなの教育技術」で文学作品の教材研究の仕方を紹介しています。まずは音読・黙読・微音読をくり返して教材と「親しくなる」こと。そのうえで、1回目は作品を楽しんで感想を書く、2回目は子どもにとって難しい言葉や表現を探す、3回目は美しい表現や言葉の使い方に線を引く、と目的を変えて読みます。
また、「登場人物の気持ちを想像しよう」のようなあいまいなめあてを、子どもが実際に何をするのかがわかる具体的な活動に置き換えることも勧めています。
実践2|物語の「3つの鉄則」で読む(白石範孝先生)
元筑波大学附属小学校の白石範孝先生は、東洋館出版社のサイトで物語の教材分析の「3つの鉄則」を紹介しています。①基本三部構成(設定・山場・結末)をとらえる、②「設定」をとらえる、③中心人物の変容から主題をとらえる、の3つです。
たとえば「ごんぎつね」では、ごんが「ひとりぼっちの小ぎつね」と設定されていることが、その後のごんの行動の理由を考える手がかりになると説明しています。
どの物語でも、まず「はじめはどうだったか」を書き出します。設定がはっきりすると、変容が見えやすくなります。
実践3|「あらすじ」と「主題」を先に言葉にする(じゃりてん先生)
教職9年目の小学校教員・じゃりてん先生は、note で、発問や活動を考える前に「あらすじ」と「主題」を自分の言葉にすることを勧めています。あらすじは「中心人物が、ある出来事を通して、どう変わったか」の型でまとめます。
学年による読みの系統も整理しています。低学年は人物の行動と出来事、中学年は中心人物の変化、高学年は人物どうしの関係性に注目する、という考え方です。そして、「この子たちが、なぜ今この物語を読むのか」を考えることが大切だと述べています。
実践4|「書いていないこと」を論理的に読む発問(山本裕貴先生)
千葉県の小学校教員・山本裕貴先生は、「学びの場.com」で、物語の教材研究を「教科内容」と「教材内容」に分けて考えています。教科内容では、「心情」「情景」などの学習用語を教え、どの作品でも使える読む力を育てます。教材内容では、作品を精読し、子どもが読み流してしまうところに発問をつくります。
たとえば「大造じいさんとガン」では、本文の手がかりから大造じいさんの年齢を考えさせ、「書いてあることをもとに、書いていないことを論理的に読み解く」学習にしています。
実践5|「10の視点」で教材を分析する(福島県の教員向け資料)
福島県が公開している教員向けの資料では、文学的な文章の教材研究の視点を10個に整理しています。作品の設定(時と場所、中心人物、対人物、語り手)、中心人物の変容(出来事の前の心情、変化)、作品の構造(事件の発端、成長につながる場面、山場)、作品の主題です。
チェックリストとして使えるので、若手の先生が一人で教材研究をするときや、学年で読みを共有するときの共通の物差しになります。

授業につなげる発問づくりのコツ
- 根拠のある問いにする:「どう思う?」ではなく、本文のどの言葉からそう考えたかを話せる問いにします。
- 語り手の言葉に注目させる:埼玉県の資料では、「プラタナスの木」で、語り手の語りを根拠に中心人物の心情がいつ変わり始めたのかをとらえる授業が紹介されています。
- 情景と心情をつなぐ:天気や景色の描写が、人物の気持ちとどう重なっているかを考えさせます。
- 選んで理由を言う形にする:「いちばん気持ちが変わったのはどの場面か」のように、選択肢から選んで理由を説明する問いは、全員が考えに参加しやすくなります。
忙しい先生のための時短のコツ
- 教材研究メモの型を決め、毎年の記録を残して「自分の教材研究ノート」にする
- 学年で教材を分担して研究し、メモを共有する
- デジタル教科書や本文のデータに直接書き込み、そのままワークシートや板書計画に使う
- 同じ作者の作品や、同じ型の物語を並べて読み、共通点を見つける
よくある質問
Q. 国語の教材研究のやり方は?
A. 素材研究(教師が一人の読者として作品を読む)、教材研究(どんな力をつけるかを決める)、指導法研究(発問や活動を考える)の順に進めるのが基本です。物語文なら、設定・構成・中心人物の変容・主題を押さえることから始めましょう。
Q. 教材研究では具体的に何をすればよいですか?
A. 本文をくり返し読んで書き込みをし、設定や山場、中心人物の変容を書き出します。そのうえで学習指導要領の指導事項と結びつけ、中心となる発問と学習活動を決めます。
Q. 教材研究ノートはどう作ればよいですか?
A. 本文の拡大コピーに書き込んだものと、この記事の教材研究メモのような1枚のまとめをセットにするのがおすすめです。毎年の授業の反省も書き足していくと、次に同じ教材を扱うときの財産になります。
Q. 教師用指導書は使わないほうがいいですか?
A. 使ってかまいません。ただ、先に読むと自分の読みが指導書の解釈に引っぱられやすいので、自分で読んで考えを書き出した後に読むのがおすすめです。
Q. 説明文の教材研究とは何が違いますか?
A. 説明文は「はじめ・なか・おわり」の構成や、問いと答え、筆者の主張をとらえるのが中心です。物語文は、設定、中心人物の変容、山場、主題、表現の工夫をとらえることが中心になります。説明文の進め方は説明文の教材研究の仕方で紹介しています。
Q. 若手で読みに自信がありません。どうすればよいですか?
A. 一人で抱え込まず、学年の先生や校内の国語に詳しい先生と読みを話し合ってみましょう。この記事の「10の視点」や教材研究メモを共通の物差しにすると、話し合いがしやすくなります。
授業てらすは、全国の小学校教員が実践を学び合うオンラインコミュニティです
物語文の教材研究も、一人で悩む必要はありません。全国の先生の授業動画や教材研究にふれながら、国語の授業力を一緒に磨いていきませんか。

