算数の教材研究の仕方|小学校算数で使える7ステップと先生たちの実践例

「明日の算数、教科書どおりに進めるだけになっている」「指導書を読んでも、子どもが考えたくなる授業にならない」「教材研究をしようとすると、気づけば何時間もかかってしまう」。算数は毎日ある教科だからこそ、教材研究の悩みはつきません。

この記事では、小学校算数の教材研究の進め方を、子どもが「考えたい」と思う授業につなげる7つのステップで整理しました。領域ごとに見るポイント、そのまま使える教材研究メモ、全国の先生たちの実践もあわせて紹介します。

職員室で算数の教科書とおはじきを使って教材研究をする先生
この記事でわかること

  • 算数の教材研究の全体像(素材研究・教材研究・指導法研究)
  • 算数の教材研究の7ステップ
  • 数と計算・図形・測定・データの活用など、領域ごとに注目したいポイント
  • そのまま使える教材研究メモ(3年「わり算」の記入例つき)
  • 先生たちの実践例5つと、問題提示・時短のコツ

この記事は、全国の小学校教員が実践を学び合うオンラインコミュニティ「授業てらす」が、公開されている先生や教育機関の実践をもとに編集しています(2026年10月時点)。

目次

算数の教材研究とは?3つの段階

教材研究とは、授業の前に教師が教材を深く理解し、「この単元で子どもにどんな力をつけるか」「そのためにどんな問題をどう出すか」を決めることです。算数でも、次の3つの段階で考えると整理しやすくなります。

算数の教材研究は3つの段階で進める

いきなり板書を考えず、まず「自分で解く」ことから始めます

1素材研究
算数の中身を理解する問題を自分で解き、既習とのつながりや大切な考え方をつかむ
→
2教材研究
どんな力をつけるかを決める単元のゴールを決め、子どもの解き方やつまずきを予想する
→
3指導法研究
どう出会わせるかを考える問題の出し方・発問・板書・まとめを決める
「何を学ばせたいか」が決まってから「どう出会わせるか」を考える

算数は、教科書どおりに進めれば授業がそれなりに成立する教科です。だからこそ、教材研究をしないと教師が説明して、子どもが練習するだけの授業になりがちです。子どもが自分で気づき、話し合う授業にするための準備が、算数の教材研究です。

国語の教材研究の進め方は、物語文の教材研究の仕方と説明文の教材研究の仕方で紹介しています。

始める前に:まず自分で解いてみる

指導書の「本時のねらい」や展開例はとても参考になりますが、最初に読むと、その流れどおりの授業しか思い浮かばなくなります。まずは教科書の問題を、子どものつもりで自分で解いてみることから始めましょう。

自分で解くと、「ここで数が大きくなるとつまずきそう」「この図があると考えやすい」など、子どもの立場からの気づきが生まれます。指導書は、自分の考えをもってから答え合わせのように読むのがおすすめです。

算数の教材研究の仕方7ステップ

ここからは、実際の進め方を7つのステップで紹介します。1〜5が素材研究と教材研究、6・7が指導法研究にあたります。

算数の教材研究 7つのステップ

1〜5が素材研究・教材研究、6・7が指導法研究です

1決める
ゴールを一言で書くこの単元で大切にしたいこと
2つなぐ
系統を確かめる前の学年・次の学年とのつながり
3解く
いろいろな解き方を書く図・式・言葉で
4予想する
つまずきを予想する誤答も書き出す
5まとめる
見方・考え方を言葉に何に目をつけ、どう考えるか
6授業へ
問題をアレンジする数値・場面・出し方を変える
7授業へ
発問とまとめを決める子どもの言葉でまとめる
ゴールを決めてから、子どもの考えを予想し、問題の出し方を考える

ステップ1|単元のゴールを一言で書く

「この単元で大切にしたいことは〇〇です」と一言で言えるようにします。知識や技能だけでなく、「どんな姿が見られれば力がついたといえるか」を、子どもの発言や感想の形で書いておくと、授業中に予想外の反応があっても落ち着いて対応できます。

ステップ2|系統表で前後のつながりを確かめる

算数は積み上げの教科です。教科書会社の系統表や学習指導要領を見て、この単元はどの既習を使うのか、次の学年で何につながるのかを確かめます。既習が分かると、「前に学んだ方法が使えるかな?」という問いを子どもから引き出しやすくなります。

ステップ3|問題を自分で解き、いろいろな解き方を書き出す

教科書の問題を、図・式・言葉など、できるだけ多くの方法で解いてみます。子どもが出しそうな解き方を並べておくと、授業で「どの考えから取り上げるか」「どの考えとどの考えをつなぐか」を事前に考えられます。

ステップ4|子どものつまずきを予想する

正しい解き方だけでなく、よくある誤答とその理由も書き出します。全国学力・学習状況調査の報告書や教科書の指導書には、つまずきやすい点がまとめられています。誤答は、授業で「どうしてこう考えたんだろう?」と話し合う大切な材料になります。

ステップ5|数学的な見方・考え方を言葉にする

この単元で子どもに働かせたい見方・考え方を、短い言葉にします。たとえば測定の領域なら「単位を決めて、そのいくつ分で表す」、図形なら「比べて、特徴をぬき出し、言葉でまとめる」です。これがはっきりすると、まとめの言葉や振り返りの視点がぶれません。

ステップ6|問題をアレンジする

教科書の問題を、数値・場面・提示の仕方を変えてアレンジします。数を小さくして始める、情報を一部かくす、条件を途中で変えるなどの工夫で、子どもの考えに「ズレ」が生まれ、「どうして?」「本当に?」という問いにつながります。

ステップ7|発問・板書・まとめを決める

最後に、問いを生む発問、考えを比べやすい板書、子どもの言葉で書くまとめを決めます。まとめは教師が用意した言葉を写させるのではなく、「今日わかったことを、自分の言葉で言うと?」と子どもに言わせる形にすると、学びが自分のものになります。

領域別に注目したいポイント

学習指導要領の領域ごとに、教材研究で特に注目したいポイントをまとめました。

領域 注目したいポイント 問いの例
数と計算 十進位取り記数法、既習の計算に帰着できるか 前に習った計算と、何が同じで何がちがう?
図形 比べる・特徴をぬき出す・言葉でまとめる過程 仲間分けすると、どんな仲間ができる?
測定(1〜3年) 単位を決めて、そのいくつ分で表す考え どうしたら、くらべやすくなる?
変化と関係(4〜6年) 2つの数量の関係、きまりの発見 片方がふえると、もう片方はどうなる?
データの活用 目的に合ったグラフ・代表値の選び方 このグラフで、言いたいことが伝わる?

教材研究メモ(記入例つき)

毎日の教材研究は、次の5項目を書くだけでも授業が変わります。3年「わり算」の導入を例に書いてみました。

算数の教材研究メモ

記入例:3年「わり算」第1時(※考え方の一例です)

単元のゴール 同じ数ずつ分けることを、わり算の式で表せる
使う既習 かけ算九九、同じ数ずつのまとまり
予想される解き方 1つずつ配る、2つずつ配る、九九で考える
予想されるつまずき 「等しく」分けることを意識せず、ばらばらに分ける
問題のアレンジ はじめは「分けてね」とだけ伝え、分け方のちがいから「同じ数ずつ」の必要性に気づかせる
5項目なら、1単元15分ほどで書ける

先生たちの実践例5選

実践1|授業のゴールを「ずばり一言」で言えるようにする(前田正秀先生)

みんなの教育技術では、富山県の小学校教諭・前田正秀先生が、低学年算数を例に教材研究の基礎を紹介しています。最初にすべきことは、子どもに身に付けたい力を明確にし、単元や授業で大切なことを一言で言えるようにすることだと述べています。授業後の子どもの理想の感想を自分で書いてみることや、領域を貫く基本となる考え方を手がかりにすることも勧めています。

まねするなら
教材研究の最初に「この授業のあと、子どもがどんな感想を書いたら成功?」と、理想の感想を1行書いてみましょう。

実践2|ゴール・既知と未知・問い続ける場面の3点で考える(佐藤寿仁先生)

東京書籍の「math connect」では、岩手大学の佐藤寿仁先生が、課題や問題設定のポイントとして、学びのゴールとそれにつながる既知を明らかにすること、既知と未知の状況を明らかにすること、問い続けることができる場面を工夫することの3点を挙げています。中学校数学の例ですが、既習とのつながりから問いを生むという考え方は小学校算数にもそのまま生かせます。

実践3|教科書の数値を変えて「ズレ」を生む(中西雅人先生)

授業てらすの実践では、大阪府の中西雅人先生が、3年「円と球」の導入で玉入れゲームを教材にしています。最初は人数を4人に減らして提示し、その後8人に増やすことで子どもの考えにズレを生み、「円」という言葉を出す前に、子どもが円を必要とする場面をつくっています。くわしくは円の授業導入の実践記事で紹介しています。

実践4|計算の前に「分ける必要感」をつくる(黒田陸先生)

鳥取県の黒田陸先生は、3年「わり算」の導入で、計算方法を教える前に子どもが「どう分けたらいいの?」と考え始める場面をつくっています。わり算を先に説明するのではなく、子どもの中に問いを生むことを導入の出発点にしています。授業の流れはわり算の導入の実践記事で見られます。

実践5|導入で「誰が話すか」を意識する(塩山拓未先生)

栃木県の塩山拓未先生は、6年「分数×分数」の導入で、教師が長く説明するのではなく、既習を思い出し、ちがいに気づき、問いが生まれ、子どもが話す流れをつくっています。「今日は分数に分数をかける計算をします」と先に言わず、子どもが気づける場面を用意することを大切にしています。くわしくは分数×分数の導入の実践記事で紹介しています。

おはじきを使って考えを話し合う3年生の子どもたちと先生

授業につなげる問題提示のコツ

1数を小さくして始める最初は数や情報を少なくして全員が考えられるようにし、途中で増やすと「さっきの方法が使える?」という問いが生まれます。
2情報を一部かくす問題の一部をかくして提示すると、「何が分かれば解ける?」と子どもが必要な情報を考え始めます。
3先に答えを言わない「今日は〇〇の計算をします」と言わず、既習との「ちがい」に子どもが気づく場面から始めます。
4誤答を取り上げる「どうしてこう考えたのかな?」と誤答の理由を考えると、正しい考え方の意味がはっきりします。
5まとめは子どもの言葉で「今日わかったことを一言で言うと?」と聞き、子どもの言葉をつないでまとめにします。

忙しい先生のための時短のコツ

毎日すべての時間で7ステップを行うのは大変です。単元の最初にステップ1〜5をまとめて行い、毎時間はステップ6・7だけを考えるようにすると、1時間の準備は10〜15分ほどにおさまります。

また、同じ学年の先生と「今日の問題、どうアレンジする?」と5分話すだけでも、ひとりで考えるより多くのアイデアが集まります。授業てらすでは、国立学園小学校の尾﨑正彦先生による「短時間でも深い学びを生む教材研究の原理」のセミナーも開いています。

よくある質問

Q. 算数の教材研究のやり方は?

A. 単元のゴールを決める、系統を確かめる、自分で解く、つまずきを予想する、見方・考え方を言葉にする、問題をアレンジする、発問とまとめを決める、の7ステップで進めるのがおすすめです。

Q. 教材研究で、まず何をすればよいですか?

A. 指導書を読む前に、教科書の問題を自分で解いてみることから始めましょう。子どもの立場で解くと、つまずきやすいところや、いろいろな解き方が見えてきます。

Q. 教師用指導書は使わないほうがいいですか?

A. 使ってかまいません。ただし、最初に読むとその流れどおりの授業になりやすいので、自分で考えたあとに、ねらいや予想される反応を確かめるために読むのがおすすめです。

Q. 1単元にどのくらい時間をかければよいですか?

A. 単元の最初に30分〜1時間ほどで全体を見通し、毎時間は10〜15分で問題の出し方とまとめを考えるのが目安です。教材研究メモの5項目を使うと、短い時間でも要点をおさえられます。

参考にした情報

授業てらすの授業の様子
全国の小学校教員が学ぶオンラインコミュニティ

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