「ラインサッカーの指導案を書かなくちゃいけない」「上手な子ばかりがボールをけって、ほかの子はボールにさわれない」「ラインマンにボールが回ってこなくて、つまらなそうにしている」。3・4年生の体育を担当する先生から、よく聞く悩みです。
この記事では、中学年のゲーム領域(ゴール型ゲーム)の「ラインサッカー」から、パスをもらえる場所に動くことを考える時間の指導案を、子どもが主体的に話し合う授業を軸にまとめました。教材研究のポイント、ルールの例、単元計画、本時の展開と板書例、そのまま使える学習カード、公開されている実践と研究を紹介します。

- 全員がボールにさわれるラインサッカーにする教材研究のポイントとルールの例
- 単元の目標と評価規準
- 単元計画(全8時間)
- 本時(パスをもらえる場所に動こう)の指導案と板書例、学習カード
- 3・4年生が主体的に話し合う5つの工夫と、実践例・研究から分かること
この記事は、全国の小学校教員が実践を学び合うオンラインコミュニティ「授業てらす」が、公開されている指導案や研究をもとに編集しています(2026年11月時点)。
ラインサッカーの教材研究
ラインサッカーは、学習指導要領解説で中学年のゴール型ゲームの例として示されているゲームです。コートの上下の帯(ラインマンゾーン)にいるラインマンが、味方からボールをもらってフリーゾーンへ返せるので、フリーゾーンの子は「ボールを持っていないときに、どこに動けばいいか」を考えやすくなります。
一方で、何も工夫しないと、上手な子がドリブルで運んで大きくけるだけのゲームになりがちです。中学年では、ボールを持たないときの動き(パスをもらえる場所に動くこと)を学べるように、ルールを易しくすることが大切です。
全員がボールにさわれるルールの例
チームの実態に合わせて、子どもと工夫していく

| コート | 中央の広い部分がフリーゾーン、上下の帯がラインマンゾーン(センターラインで4つに区切る)、両端がキーパーゾーン。三角コーンの間の線がゴールライン。はじめはゴールラインをコートの端いっぱいに広くとる ポイント:ゾーンを色テープやコーンで分けると、自分の場所が分かりやすい |
|---|---|
| 人数 | 1チーム6人。フリーゾーン3人、ラインマン2人、キーパー1人 ポイント:前半と後半で役割を交代し、全員がフリーゾーンでプレーする |
| ラインマン・キーパー | ラインマンとキーパーは手を使ってよい。ラインマンは味方からのパスをキャッチして、フリーゾーンの仲間へ転がして返す。ラインマンゾーンから直接シュートはできない ポイント:ラインマンを使うとパスがつながり、相手をかわしやすくなる |
| 得点・ファウル | フリーゾーンの選手がけったボールが、コーンの間のゴールラインをこえたら1点。キーパー・ラインマン以外が手でさわったらファウル ポイント:やわらかいボール(サッカーボール3号の軽量球など)を使う |
| 点差が開いたら | 勝っているチームがねらうゴールラインを、コーンを動かしてせまくする ポイント:点差がちぢまりやすくなり、最後まで白熱したゲームになる |
ラインマンにボールが回ってこない、苦手な子がずっとラインマンになる、といった課題も研究で報告されています。役割のローテーションをはじめからルールに入れ、ラインマンを使ってパスがつながった場面をたくさんほめると、全員がゲームに参加できます。
ほかの学年のゲーム・ボール運動は1年体育「シッティングホッケー」指導案や5年体育「ゴール型バスケットボール」でも紹介しています。
単元の目標と評価規準
学習指導要領(第3学年及び第4学年 Eゲーム ア ゴール型ゲーム)の内容をもとに、目標と評価規準を次のように設定します。
| 観点 | 評価規準(例) |
|---|---|
| 知識・技能 | ラインサッカーの行い方を知っている。基本的なボール操作と、ボールを持たないときの動き(ボールを持っている人と自分の間に相手がいない場所に動くことなど)によって、易しいゲームをすることができる。 |
| 思考・判断・表現 | 規則を工夫したり、ゲームの型に応じた簡単な作戦を選んだりするとともに、考えたことを友達に伝えている。 |
| 主体的に学習に 取り組む態度 |
運動に進んで取り組み、規則を守り誰とでも仲よく運動をしたり、勝敗を受け入れたり、友達の考えを認めたり、場や用具の安全に気を付けたりしようとしている。 |
※学習指導要領 体育 第3学年及び第4学年 Eゲーム「ア ゴール型ゲーム」をもとにした例です。
単元計画(全8時間)
公開されている授業展開例では、ラインサッカーを全8時間で計画している例が見られます。ここでは、全8時間の例を紹介します。時数は学校の年間指導計画で確認してください。
| 時 | 主な学習活動 | 子どもが話す工夫 |
|---|---|---|
| 1時 | 学習の進め方とルールを知り、試しのゲームをする。チームをつくる | 試しのゲームで「楽しかったこと・困ったこと」を出し合う |
| 2時 | ボールを持ったら、ゴールの方に体を向けてパスやシュートをする | 「どこを見てけるといい?」をペアで伝え合う |
| 3時 | ラインマンを使って攻める | 「ラインマンにパスすると、どんないいことがある?」を話し合う |
| 4時 (本時) |
ボールを持っていないときに、パスをもらえる場所に動く | 作戦ボードで「どこにいればパスをもらえる?」を話し合う |
| 5〜6時 | チームに合った作戦を選んでゲームをする | 前半のゲームのあとに作戦を見直す |
| 7時 | みんなが楽しめるようにルールを工夫してゲームをする | 「このルールにしたら、だれが楽しくなる?」を話し合う |
| 8時 | ラインサッカー大会をして、学習をふり返る | チームの伸びと友達のよい動きを伝え合う |
本時の指導案(パスをもらえる場所に動こう)
本時は、ボールを持っていないときに、パスをもらえる場所に動くことを考える時間です。前の時間のゲームで「パスを出したいのに、味方が相手のうしろにいて出せなかった」場面をふり返り、「ボールを持っていない人は、どこにいればパスをもらえる?」と問います。作戦ボードで動き方を考え、ゲームで試して確かめます。
- 本時の目標:ボールを持っている人と自分の間に相手がいない場所に動いて、パスをもらうことができる。
- めあて(子どもの言葉で):パスをもらえる場所に動こう。
- 準備する物:ボール(チームに1個)、ビブス、コーン、作戦ボードとマグネット、学習カード、タイマー
| 段階 | 学習活動と主な発問 | 予想される子どもの反応 | 留意点・話す工夫 |
|---|---|---|---|
| 導入 (10分) |
①準備運動とボール慣れ(2人組のパス、ドリブル)をする。 ②前の時間にパスが出せなかった場面を、作戦ボードで再現する。 発問:どうしてパスが出せなかったのかな? |
「味方が相手のうしろにいた」「みんながボールの近くに集まっていた」「パスしたら取られそうだった」 | 作戦ボードのマグネットを動かしながら、場面を全員で確かめる。めあてを確認する。 |
| 展開1 (10分) |
③3対1のパスゲームをする(攻め3人がパスをつなぐ)。 発問:パスをもらいやすかったのは、どんな場所? |
「相手がいない横の方」「ボールを持っている人から見える場所」「近すぎないところ」 | パスがつながった場面で止めて、もらった子の位置を全員で見る。気づきを短い言葉で板書する。 |
| 展開2 (20分) |
④チームで作戦ボードを使い、動き方を話し合う(1分)。 ⑤ラインサッカー(前半3分)→作戦タイム(1分)→後半3分。 発問:前半で、パスをもらえる場所に動けた人はいた? |
「〇〇さんが空いている所に走ってくれた」「ラインマンの近くに動くともらいやすい」「後半は広がってみよう」 | 前半と後半で役割(フリーゾーン・ラインマン・キーパー)を交代する。作戦タイムでは、よかった動きを1つ見つけて伝え合うようにする。 |
| まとめ (5分) |
⑥学習カードにふり返りを書く。 ⑦友達のよい動きを発表する。 |
「ボールを持っている人と自分の間に、相手がいない場所に動くと、パスをもらえる」 | 動きのポイントを子どもの言葉でまとめる。次の時間に作戦を選ぶことを伝える。 |
板書の例
- 味方が 相手のうしろ
- みんな ボールの近く
- パスすると 取られそう
- 持っている人と
- 自分の間に
- 相手がいない所へ
板書では、左にパスが出せなかった理由、真ん中にもらいやすい場所、右に分かったことを書きます。作戦ボードの図を写真でとっておき、次の時間のはじめに見せると、作戦を選ぶ話し合いにすぐ入れます。
学習カード
本時で使える学習カードです。作戦をかくコートの図、今日のふり返り、友達のよい動き、次にためしたい作戦を書く欄があります。印刷してそのまま使えます(A4)。

3・4年生が主体的に話し合う5つの工夫
「〇〇さんが〜に動いてくれたから、パスが出せました。」
「次は〜に広がって、パスをもらいたいです。」
つまずきやすいポイントと手立て
| つまずき | 手立て |
|---|---|
| みんながボールに集まってしまう | 3対1のパスゲームで、空いている場所の良さを体験させる。「ボールから少しはなれる」ことを合言葉にする。 |
| ラインマンにボールが回ってこない | ラインマンを使ってパスがつながった場面を全体で紹介する。ラインマンも名前を呼んでパスを求めるようにする。 |
| 苦手な子がずっとラインマンやキーパーになる | 前半・後半で役割を交代することを、はじめにルールとして決めておく。 |
| ラインマンゾーンから直接シュートしてしまう | 「ラインマンは仲間に返す人」と役割を確かめ、ラインマンが返したボールでフリーゾーンの選手がシュートする流れを練習する。 |
| ボールをけるのがこわい | やわらかく軽いボールを使う。けるときは、ボールの横に立ち足をおき、足の内側でけることを練習で確かめる。 |
ゲーム中は、ボールに集まって体がぶつかることがあります。体をぶつける・おす・足をひっかけるはファウルにすることを確かめ、コートのまわりに障害物がないか、準備のときにチームで確認させましょう。
実践例と研究から分かること
実践1|パスをつなぐ易しいゲームから作戦を工夫する(千葉県教育委員会 授業展開例)
千葉県教育委員会が公開している3年生のラインサッカーの授業展開例(全8時間)では、4対4のゲームを「ゲーム3分→作戦1分→ゲーム3分」で行っています。前半の時間では、ハーフコートで攻め4人・守り3人の練習ゲームを行い、「ボールを持ったらゴールの方向に体を向けて、三角形をつくる」トライアングル作戦を共通で学びます。後半の時間では、チームの課題に合わせてルールやコートの形を選び、まとめにトーナメント大会を行っています。
はじめは攻めの人数を多くした練習ゲームにすると、パスがつながる経験ができ、作戦の話し合いが具体的になります。
研究|ラインマンにボールが回らない課題(兵庫教育大学)
兵庫教育大学の後藤幸弘先生らの研究では、4年生のラインサッカーの授業を記録して分析しています。その結果、上手な子がドリブルや大きなキックで攻める場面が多く、ラインマンにボールが回ってこない、苦手な子がラインマンになりやすい、といった課題が報告されています。役割の交代や攻めの人数を多くするルールなど、全員がボールにさわれる工夫が大切であることが分かります。

よくある質問
Q. ラインサッカーは何年生で行うことが多いですか?
A. 中学年(3・4年生)のゴール型ゲームの例として、学習指導要領解説に示されています。公開されている授業展開例では、全8時間で計画している例が見られます。
Q. ラインマンやキーパーはつまらなくなりませんか?
A. ラインマンとキーパーは手を使えるので、ボールが苦手な子も活躍しやすい役割です。ラインマンを使ったパスで点が入る経験をすると、ラインマンにパスが集まります。前半と後半で必ず役割を交代しましょう。
Q. サッカーが得意な子と苦手な子の差が大きいときは?
A. 点差が開いたら、勝っているチームがねらうゴールラインをコーンでせまくすると、最後まで拮抗したゲームになります。ほかにも、チームの力が同じくらいになるようにチームを分け、ドリブルを何歩までにする、全員がボールにさわったら1点プラスにする、などのルールを子どもと工夫すると、全員が楽しめます。
Q. 体育館でもできますか?
A. できます。バスケットボールのコートなどを使い、フリーゾーン・ラインマンゾーン・キーパーゾーンを色テープで区切ります。やわらかいボールを使い、壁の近くにラインをとらないようにして、ぶつからない広さを確保しましょう。

