「江戸幕府の単元の指導案を書かなくちゃいけない」「参勤交代が『お金を使わせるため』の暗記で終わってしまう」「人物や制度の名前を覚えるだけで、子どもが考える場面がつくれない」。6年生の社会を担当する先生から、よく聞く悩みです。
この記事では、6年社会の単元「江戸幕府と政治の安定」から、幕府がなぜ参勤交代を大名にさせたのかを考える時間の指導案を、子どもが主体的に話し合う授業を軸にまとめました。教材研究のポイント、単元計画、本時の展開と板書例、そのまま使えるワークシート、先生たちの実践を紹介します。

- 「江戸幕府はなぜ260年も続いた?」を単元を貫く問いにする教材研究のポイント
- 単元の目標と評価規準
- 単元計画(全6時間)
- 本時(なぜ参勤交代をさせたのか)の指導案と板書例、ワークシート
- 6年生が主体的に話し合う5つの工夫と、先生たちの実践例
この記事は、全国の小学校教員が実践を学び合うオンラインコミュニティ「授業てらす」が、公開されている指導案や先生たちの実践をもとに編集しています(2026年11月時点)。
江戸幕府の単元の教材研究
6年生の子どもは、戦国時代の学習で「武士どうしが争い続けた時代」をつかんでいます。そこで、年表で江戸時代が約260年も大きな戦いがなく続いたことを示すと、「なぜそんなに長く続いたの?」という問いが自然に生まれます。この問いを単元を貫く学習問題にすると、幕府の政策の一つ一つが「答えを探す手がかり」になります。
江戸幕府は、なぜ260年も続いた?
だれに、どんな政策をしたのかで整理する
| 大名に | 大名の配置・武家諸法度・参勤交代 ポイント:「なぜ参勤交代をさせたの?」が、いちばん話し合いが生まれる |
|---|---|
| 百姓・町人に | 身分の区別・年貢のしくみ ポイント:人々のくらしを支える一方で、きびしい決まりもあった |
| 外国に | キリスト教の禁止・鎖国(貿易の相手と場所を限る) ポイント:外国とのつながりを幕府が管理した |
| 結果として | 大きな反乱や戦いがない世の中が続いた ポイント:複数の政策を関連付けて、学習問題の答えをつくる |
本時の参勤交代では、子どもから「大名にお金を使わせて、反乱できなくするため」という意見がよく出ます。ただ、幕府が定めた武家諸法度(寛永令)では、参勤交代は大名が将軍に仕える務めとして定められています。お金がかかったことは目的ではなく結果として扱い、大名配置図や大名行列の資料から、幕府と大名の関係を考えさせることが大切です。
ほかの学年の社会は5年社会「工業生産を支える運輸と貿易」指導案や4年社会「地域の発展につくした人々」指導案でも紹介しています。
単元の目標と評価規準
学習指導要領(第6学年 内容(2) 我が国の歴史上の主な事象)の内容をもとに、目標と評価規準を次のように設定します。
| 観点 | 評価規準(例) |
|---|---|
| 知識・技能 | 江戸幕府の始まり、参勤交代や鎖国などの幕府の政策、身分制を手掛かりに、武士による政治が安定したことを理解している。年表や地図、絵図などの資料で、必要な情報を集め、読み取っている。 |
| 思考・判断・表現 | 世の中の様子、人物の働きなどに着目して問いを見いだし、幕府の政策を関連付けて、江戸幕府の政治が安定した理由を考え、表現している。 |
| 主体的に学習に 取り組む態度 |
江戸幕府と政治の安定について、予想や学習計画を立てて主体的に追究し、学習問題を解決しようとしている。 |
※学習指導要領 社会 第6学年 内容(2)「我が国の歴史上の主な事象」をもとにした例です。
単元計画(全6時間)
公開されている指導案では、この単元を全6〜7時間で計画している例が見られます。ここでは、全6時間の例を紹介します。時数は学校の年間指導計画と指導書で確認してください。
| 時 | 主な学習活動 | 子どもが話す工夫 |
|---|---|---|
| 1時 | 戦国時代と江戸時代の年表をくらべ、学習問題「江戸幕府はなぜ260年も続いたのだろう」をつくる | 時代の長さを紙テープでくらべ、気づいたことを出し合う |
| 2時 | 学習問題の答えを「大名・百姓町人・外国」の3つの観点で予想し、学習計画を立てる | これまでの学習(戦国大名・検地・刀狩)をもとに予想する |
| 3時 (本時) |
幕府が大名に行った政策(大名の配置・参勤交代)を調べ、そのねらいを考える | 「なぜ参勤交代をさせたの?」を幕府の立場で話し合う |
| 4時 | 百姓・町人に対する政策(身分の区別・年貢)を調べる | 人々のくらしの立場から、政策のよい点・きびしい点を考える |
| 5時 | 外国に対する政策(キリスト教の禁止・鎖国)を調べる | 「なぜ貿易の相手と場所を限ったの?」を話し合う |
| 6時 | 3つの観点を関連付けて、学習問題の答えをまとめる | 思考ツールで政策どうしのつながりを整理し、説明し合う |
本時の指導案(なぜ参勤交代をさせたのか)
本時は、幕府が大名に行った政策を調べ、参勤交代のねらいを考える時間です。「幕府は、なぜ参勤交代を大名にさせたのだろう?」と問い、大名配置図や大名行列の資料をもとに、幕府の立場で話し合います。「お金を使わせるため」で終わらせず、幕府と大名の関係がどう変わったのかを考えることを大切にします。
- 本時の目標:大名の配置や参勤交代について資料を読み取り、幕府が大名を従わせ、世の中を安定させようとしたことを考え、表現する。
- めあて(子どもの言葉で):幕府はなぜ、参勤交代を大名にさせたのか考えよう。
- 準備する物:大名配置図(親藩・譜代・外様)、大名行列の絵図、地域の藩の参勤交代の道のり、武家諸法度の一部、ネームプレート
| 段階 | 学習活動と主な発問 | 予想される子どもの反応 | 留意点・話す工夫 |
|---|---|---|---|
| 導入 (7分) |
①学習問題と、前の時間の予想をふり返る。 ②大名配置図を見て、気づいたことを出し合う。 発問:親藩・譜代・外様の大名は、どこに置かれている? |
「江戸の近くは親藩や譜代が多い」「外様は遠くに置かれている」「大事な場所は徳川の親せき」 | 色分けした配置図を大きく掲示する。外様大名は関ヶ原の戦いのあとに従った大名であることを確かめる。 |
| 展開1 (13分) |
③大名行列の絵図や、地域の藩の参勤交代の道のりを調べる。 発問:参勤交代は、大名にとってどんなものだった? |
「何百人もの行列で大変」「何十日もかけて江戸まで行く」「妻や子どもは江戸に住まなければならない」 | 地域の藩の道のりや日数を示し、実感をもたせる。 |
| 展開2 (17分) |
④グループで、幕府が参勤交代をさせたわけを考える。 発問:幕府の立場で考えると、参勤交代をさせるとどんな良いことがある? |
「家族が江戸にいると反乱を起こしにくい」「将軍に従うことを示させられる」「お金がかかって力がつかない」 | 武家諸法度の一部を示し、参勤交代が将軍に仕える務めとして定められたことを確かめる。お金がかかったことは「結果」として整理する。 |
| まとめ (8分) |
⑤分かったことをまとめる。 ⑥学習問題の答えに、つけ加えられることを書く。 |
「幕府は大名の配置や参勤交代で大名を従わせ、反乱を起こしにくくして、世の中を安定させた」 | まとめは子どもの言葉で書く。次の時間の「百姓・町人への政策」につなげる。 |
板書の例
- 江戸の近くは 親藩・譜代
- 外様は 遠くに
- 大名行列は 何百人・何十日
- 大名を 従わせた
- 反乱を 起こしにくくした
- 世の中が 安定した
板書では、左に調べたこと、真ん中に幕府の立場で考えたこと、右に分かったことを書きます。真ん中に「お金がかかった=結果」と小さく書き分けておくと、目的と結果のちがいを子どもと確かめられます。
ワークシート
本時で使えるワークシートです。大名配置図から読み取る欄、大名の立場と幕府の立場で考える表、まとめ、学習問題の答えにつけ加える欄があります。印刷してそのまま使えます(A4)。

6年生が主体的に話し合う5つの工夫
「幕府の立場で考えると、〜だから参勤交代をさせたと思います。」
「〇〇さんの考えにつけ加えて、資料の〜から、〜ということも言えます。」
つまずきやすいポイントと手立て
| つまずき | 手立て |
|---|---|
| 参勤交代の目的を「お金を使わせるため」だけと考える | 武家諸法度の一部を示し、将軍に仕える務めとして定められたことを確かめる。お金がかかったことは結果として整理する。 |
| 親藩・譜代・外様のちがいが分からない | 関ヶ原の戦いの前から徳川に従っていたか、あとから従ったかで分けて説明し、配置図の色と結びつける。 |
| 大名の立場だけで考えてしまう | 「幕府の立場で考えると、どんな良いことがある?」と問い、両方の立場を表に整理させる。 |
| 政策どうしのつながりが見えない | 毎時間、学習問題の答えにつけ加える欄を書かせ、最後に思考ツールで関連付けさせる。 |
江戸時代の政策は、人々にとってきびしい面もありました。身分の区別などを扱うときは、当時の決まりとして資料にもとづいて説明し、今の社会の考え方とくらべる視点ももたせましょう。
先生たちの実践例
実践1|地域の藩の参勤交代から考える(香川県高松市立一宮小学校)
高松市立一宮小学校の大野勝生先生の指導案(全6時間)では、学習問題「江戸幕府は戦いがさかんな武士の世の中で、なぜこんなにも長く続いたのだろう」の答えを、大名・百姓町人・外国の3つの観点から予想し、本時(第3時)で参勤交代を扱っています。大名配置図、大名行列の資料に加えて、香川県立ミュージアムの資料で地元の丸亀藩の参勤交代の道のりを示し、実感をもたせています。経済的な負担は参勤交代の目的ではなく結果であることを押さえ、武家諸法度(寛永令)を根拠資料として扱っているのも工夫です。
自分たちの県の藩が、江戸まで何日かけて、どの道を通ったのかを地図で示すと、6年生の歴史学習がぐっと身近になります。
実践2|殿様への「報告」で政策を評価する(茨城県教育研修センター 長期研修)
茨城県教育研修センターの長期研修で作成された間宮朋子先生の指導案(全7時間)では、架空の殿様と家臣の会話から「江戸幕府の政策を調べて殿様に報告する」というパフォーマンス課題を設定しています。子どもは政策ごとに、関わる立場の人々の満足度と、幕府がどれだけコントロールできたかをメーターで表し、友達と対話します。最後はコンセプトマップで政策どうしを関連付け、「報告の文」にまとめています。

よくある質問
Q. この単元は何時間扱いが多いですか?
A. 公開されている指導案では、全6〜7時間で計画している例が見られます。学校の年間指導計画と指導書で確認してください。
Q. 参勤交代は「大名にお金を使わせるため」と教えてもいいですか?
A. お金がかかったことで大名の力が弱まった面はありますが、武家諸法度では将軍に仕える務めとして定められています。目的と結果を分けて考えさせると、資料にもとづいて歴史を考える力が育ちます。
Q. 「鎖国」という言葉は使ってもいいですか?
A. 教科書によって扱い方がちがいます。最近は、幕府が貿易の相手や場所を限り、外国とのつながりを管理したことに注目して説明することが多くなっています。使っている教科書の表現に合わせましょう。
Q. 歴史が苦手な子も話し合いに参加できるようにするには?
A. 大名配置図のように、色や位置で読み取れる資料から始めると、知識の差があっても気づきを出しやすくなります。「幕府の立場ならどうする?」と、自分が決める側になって考えさせるのも効果的です。

