電流がうみ出す力 指導案 5年理科|「電磁石を強くするには?」から考える本時の発問・板書・ワークシート

「電磁石の単元の指導案を書かなくちゃいけない」「実験が『クリップが何個ついたか』を数えるだけで終わってしまう」「条件をそろえる大切さが、子どもに伝わらない」。5年生の理科を担当する先生から、よく聞く悩みです。

この記事では、5年理科の単元「電流がうみ出す力」(電磁石の性質)から、電磁石を強くする方法を調べる時間の指導案を、子どもが主体的に話し合う授業を軸にまとめました。教材研究のポイント、単元計画、本時の展開と板書例、そのまま使えるワークシート、先生たちの実践を紹介します。

電磁石でクリップを持ち上げて数える5年生の男の子と女の子
この記事でわかること

  • 「電池を増やせば強くなる」を、条件制御の問いに変える教材研究のポイント
  • 単元の目標と評価規準
  • 単元計画(全10時間)
  • 本時(電磁石を強くする方法)の指導案と板書例、ワークシート
  • 5年生が主体的に話し合う5つの工夫と、先生たちの実践例

この記事は、全国の小学校教員が実践を学び合うオンラインコミュニティ「授業てらす」が、公開されている指導案や先生たちの実践をもとに編集しています(2026年10月時点)。

目次

電磁石の単元の教材研究

5年生の子どもは、4年生で「乾電池を直列につなぐと電流が大きくなる」ことを学んでいます。そのため「電池を増やせば電磁石も強くなる」という予想はすぐに出ます。一方で、「巻き数も増やした方が強い」「導線を長くすればいい」など、いくつもの条件を同時に変えてしまう子が多いのがこの単元の特徴です。

電磁石を強くする条件は?

「変える条件」は1つ、「変えない条件」はそろえる

電流の大きさ 電池1個 → 2個(直列)で強くなる
ポイント:巻き数・導線の長さ・鉄心はそろえたまま比べる
コイルの巻き数 50回 → 100回で強くなる
ポイント:導線の全体の長さをそろえるため、余った導線は切らずに束ねる
導線の長さ そろえる条件
ポイント:「なぜ切っちゃいけないの?」が、いちばん話し合いが生まれる
鉄心・電池の種類 そろえる条件
ポイント:新しい電池と古い電池を混ぜないように声をかける
話し合いの軸は「どの条件を変えて、どの条件をそろえる?」

大切なのは、強くなったかどうかだけでなく、「何を変えて、何をそろえたから、そう言えるのか」を子どもが説明できることです。5年生で育てたい「条件を制御しながら調べる力」は、この単元でいちばん実感をもって身につきます。

ほかの学年の理科は4年理科「わたしたちの体と運動」指導案や3年理科「じしゃくのふしぎ」指導案でも紹介しています。

単元の目標と評価規準

学習指導要領(第5学年「A 物質・エネルギー」(3) 電流がつくる磁力)の内容をもとに、目標と評価規準を次のように設定します。

観点 評価規準(例)
知識・技能 電流の流れているコイルは、鉄心を磁化する働きがあり、電流の向きが変わると電磁石の極も変わること、電磁石の強さは電流の大きさや導線の巻数によって変わることを理解している。電流計などを正しく使い、結果を記録している。
思考・判断・表現 電流がつくる磁力について、予想や仮説をもとに、条件を制御した解決の方法を発想し、表現している。
主体的に学習に
取り組む態度
電流がつくる磁力について進んで調べ、学んだことを身の回りの電磁石の利用に生かそうとしている。

※学習指導要領 理科 第5学年「A 物質・エネルギー」(3) をもとにした例です。

単元計画(全10時間)

公開されている指導案では、この単元を全10〜11時間で計画している例が見られます。ここでは、全10時間の例を紹介します。時数は学校の年間指導計画と指導書で確認してください。

時 主な学習活動 子どもが話す工夫
1時 強力な電磁石の演示やゲームを見て、気づいたことから問題をつくる 「スイッチを切ると落ちるのはなぜ?」を出し合う
2・3時 電磁石をつくり、棒磁石とくらべながら性質を調べる 鉄を引きつける・極がある、の2つの視点でくらべる
4時 電流の向きを変えると極が変わるかを調べる 班ごとに電池の向きがちがう結果から話し合う
5時
(本時)
電磁石を強くする方法を考え、条件をそろえた調べ方を計画し、電流の大きさで調べる 「どの条件を変えて、どれをそろえる?」を話し合う
6・7時 コイルの巻き数を変えて調べ、結果をまとめる 「導線を切らずに束ねるのはなぜ?」を説明し合う
8・9時 電磁石の性質を使ったおもちゃや道具をつくる どの性質を使ったかを紹介し合う
10時 身の回りで電磁石が使われているものを調べ、学習をまとめる モーターやクレーンなど、強さの調節が必要な理由を考える
4時で「班ごとに結果がちがう」経験をしておくと、本時の「条件をそろえないと、くらべられない」という話し合いが自然に生まれます。

本時の指導案(電磁石を強くする方法)

本時は、電磁石を強くする方法を考え、条件をそろえて調べる時間です。実験の前に「電磁石を強くするには、何を変えればいい?」と予想させ、出てきた条件を「変える条件」と「そろえる条件」に分けて計画を立てます。結果を教えるより、「1つだけ変えてくらべる」という調べ方に子ども自身が納得することを大切にします。

  • 本時の目標:電磁石を強くする方法について予想をもとに条件を制御した実験を計画し、電流を大きくすると電磁石が強くなることを調べる。
  • めあて(子どもの言葉で):電磁石を強くするには、どうすればよいか調べよう。
  • 準備する物:電磁石(100回巻き・導線の長さをそろえたもの)、乾電池2個、電池ボックス、電流計(または簡易検流計)、ゼムクリップ、スイッチ
段階 学習活動と主な発問 予想される子どもの反応 留意点・話す工夫
導入
(7分)
①前の時間の電磁石で、クリップがいくつつくかを見る。
②めあてを確かめる。
発問:もっとたくさんクリップをつけるには?
「電池を増やす」「巻き数を増やす」「導線を太くする」「鉄心を大きくする」 出てきた方法をすべて板書し、どれから調べるかをみんなで決める。
展開1
(13分)
③電流を大きくすると強くなるかを調べる計画を立てる。
発問:電池を2個にするとき、そろえる条件は何?
「巻き数は同じにする」「同じ電磁石を使う」「クリップのつけ方も同じにしないと」 「変える条件」「そろえる条件」の表をワークシートにつくる。班の計画を発表させ、足りない条件を補い合う。
展開2
(17分)
④電池1個と2個(直列)でクリップの数をくらべる。各3回はかる。
⑤電流計で、電流の大きさもはかる。
「2個のほうがたくさんつく」「電流も大きくなっている」「1回目と2回目で数がちがう」 回数のばらつきは平均や多い・少ないの傾向で考えさせる。ショートしないよう、電流を流すのは短い時間にする。
まとめ
(8分)
⑥結果からいえることをまとめる。
⑦次の時間に調べる条件(巻き数)を決める。
「電流を大きくすると電磁石は強くなる」「巻き数を変えるときは、電池は1個にそろえる」 まとめは「何をそろえて、何を変えたから」をつけて書かせる。

板書の例

電磁石を強くするには、どうすればよいか調べよう
よそう
  • 電池を ふやす
  • 巻き数を ふやす
  • 導線を 太くする
何を変えて 何をそろえる?
けっか
電池1個:クリップ ○個(電流 ○A)
⇔
電池2個:クリップ ○個(電流 ○A)
(変える条件・そろえる条件の表を貼る)
わかったこと
  • 電流が 大きいほど 強い
  • 巻き数・導線の長さは そろえた
  • 次は 巻き数を 調べる
電流を大きくすると 電磁石は強くなる

板書では、左に予想、真ん中に結果、右に分かったことを書きます。真ん中には「変える条件」「そろえる条件」の表を貼り、各班の結果を書きこむと、条件をそろえたからくらべられることが目で見て分かります。

ワークシート

本時で使えるワークシートです。予想を書く欄、変える条件・そろえる条件の表、3回分の結果を書く表、まとめとふり返りの欄があります。印刷してそのまま使えます(A4)。

5年理科 電流がうみ出す力のワークシート。電磁石を強くする方法の予想、変える条件とそろえる条件の表、電池1個と2個のクリップの数を3回記録する表、まとめ、ふり返りの欄がある

5年生が主体的に話し合う5つの工夫

1方法を子どもから出す「もっとクリップをつけるには?」と問うと、電池・巻き数・導線など、調べたい条件が子どもから出てきます。
2条件を表で分ける「変える条件」「そろえる条件」の表をつくると、何をくらべているかが全員で共有できます。
3班の計画を見せ合うほかの班の計画を見ると、「クリップのつけ方もそろえないと」など、足りない条件に気づきます。
43回はかる1回ごとに数がばらつく経験から、「何回かはかって傾向を見る」大切さに気づきます。
5「なぜそう言える?」を問うまとめで「何をそろえたから?」と問い返すと、結論と調べ方がつながります。
使える話型
「〜だけを変えて、〜はそろえました。だから、〜といえます。」
「〇〇班は〜をそろえていなかったので、くらべられないと思います。」

つまずきやすいポイントと手立て

つまずき 手立て
電池と巻き数を同時に変えてしまう 「2つ変えたら、どちらのおかげで強くなったか分かる?」と問い、1つだけ変える計画に直させる。
巻き数を変えるとき、余った導線を切ってしまう 導線の長さが変わると電流の大きさも変わることを伝え、余った導線は束ねておくようにする。
クリップの数が毎回ちがって結論が出せない 3回はかり、多い・少ないの傾向でくらべさせる。クリップのつけ方(近づけ方)もそろえる条件に入れる。
電流計の使い方が分からない 回路図を拡大して掲示し、つなぎ方を確認してから電流を流す。最初は大きい目盛りの端子につなぐ。

電磁石に長い時間電流を流すと、導線や電池が熱くなります。電流を流すのは調べるときだけにし、乾電池の並列つなぎと直列つなぎをまちがえないよう、つなぎ方を確認してから実験を始めましょう。

先生たちの実践例

実践1|電磁石メイズで「強さを調節する」単元づくり(熊本大学教育学部附属小学校)

熊本大学教育学部附属小学校の境目貴秀先生の指導案(全10時間)では、スチールボールを電磁石で運ぶ「電磁石メイズ」を単元の軸にしています。ステージによって強い電磁石が必要だったり、弱い電磁石が必要だったりするため、子どもは電池のつなぎ方とコイルの巻き数を調節しながら追究します。本時では実験結果を1枚の模造紙にまとめ、成功と失敗をシールで色分けしました。「100回と200回の間は試していない」と気づいた子が中間の巻き数を試すなど、データをもとに考える姿が生まれています。

まねするなら
「強くする」だけでなく「ちょうどよい強さにする」課題を出すと、電流と巻き数の関係を何度も使う必要が生まれ、条件制御が自然にくり返されます。

実践2|電池の向きを指定せず、結果のちがいから問いをつくる(仙台市立南材木町小学校)

仙台市立南材木町小学校の小原瞳先生の指導案(全11時間)では、電磁石をつくって棒磁石とくらべる時間に、あえて電池の向きを指定せずに実験させています。班によって極の向きがちがう結果が出たことから、「電池の向きが逆だから?」という子どもの気づきを取り上げ、電流の向きと極の関係を確かめる実験につなげています。拡大ワークシートを掲示し、班ごとの結果をくらべられるようにしているのも工夫です。

電磁石を持って見せる先生と、実験する5年生の子どもたち

よくある質問

Q. 電磁石の単元は何時間扱いが多いですか?

A. 公開されている指導案では、全10〜11時間で計画している例が見られます。おもちゃづくりを入れるかどうかで時数が変わるので、学校の年間指導計画と指導書で確認してください。

Q. 巻き数を変えるとき、なぜ導線を切ってはいけないのですか?

A. 導線の長さが変わると、回路に流れる電流の大きさも変わってしまうからです。巻き数だけを変えるために、余った導線は切らずに束ねておきます。この理由を子どもに説明させると、条件制御の理解が深まります。

Q. 電流計がない場合はどうすればいいですか?

A. 簡易検流計でも、針のふれ方で電流の大小をくらべられます。電流の大きさを数値で扱わない場合も、「電池2個の直列つなぎで電流が大きくなる」という4年生の学習とつなげて考えさせましょう。

Q. 強さを何ではかるのがいいですか?

A. ゼムクリップの数が一般的です。クリップの大きさをそろえ、近づけ方も同じにします。鉄くぎやスチールボールなど、持ち上げられた数や重さでくらべる方法もあります。

参考にした情報

授業てらすの授業の様子
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