「運輸と貿易の単元の指導案を書かなくちゃいけない」「グラフを読み取るだけの授業になってしまう」「輸出・輸入が、子どもの生活と遠い話になってしまう」。5年生の社会を担当する先生から、よく聞く悩みです。
この記事では、5年社会の単元「工業生産を支える運輸と貿易」から、輸出入品がどうやって運ばれているかを考える時間の指導案を、子どもが主体的に話し合う授業を軸にまとめました。教材研究のポイント、単元計画、本時の展開と板書例、そのまま使えるワークシート、先生たちの実践を紹介します。

- 「飛行機? 船?」の予想を、運輸の役割を考える問いに変える教材研究のポイント
- 単元の目標と評価規準
- 単元計画(全6時間)
- 本時(輸出入品はどうやって運ばれる?)の指導案と板書例、ワークシート
- 5年生が主体的に話し合う5つの工夫と、先生たちの実践例
この記事は、全国の小学校教員が実践を学び合うオンラインコミュニティ「授業てらす」が、公開されている指導案や先生たちの実践をもとに編集しています(2026年11月時点)。
運輸と貿易の単元の教材研究
5年生の子どもに「外国から来る物は、何で運ばれてくる?」と聞くと、「飛行機」と答える子が少なくありません。ところが、日本の貿易を重さで見ると、約99.6%が船で運ばれています(日本海事広報協会の資料による)。この「思っていたのとちがう」が、運輸の役割を考えるきっかけになります。
何を、何で運ぶ?
運ぶ物によって、輸送の方法を選んでいる
| 船 | 一度にたくさん、安く運べる。時間はかかる ポイント:原油・鉄鉱石・自動車など、重くて大きい物。「なぜ99.6%も?」がいちばん話し合いが生まれる |
|---|---|
| 飛行機 | 速いが、運べる量が少なく、運賃が高い ポイント:半導体(IC)や生鮮品など、軽くて高い物・急ぐ物 |
| トラック | 港や空港から工場・お店まで、細かく届けられる ポイント:国内の輸送の中心。高速道路とつながっている |
| 鉄道 | 決まった時刻に、たくさんの荷物を運べる ポイント:長い距離をまとめて運ぶのに向いている |
大切なのは、輸送手段の名前を覚えることではなく、「何を運ぶか(重さ・量・急ぎ)」と「何で運ぶか(速さ・量・費用)」を結びつけて考えることです。そこから、原料を輸入して製品を輸出する日本の工業生産と、それを支える運輸のつながりが見えてきます。
ほかの学年の社会は6年社会「江戸幕府と政治の安定」指導案、4年社会「地域の発展につくした人々」指導案や3年社会「火事からくらしを守る」指導案でも紹介しています。
単元の目標と評価規準
学習指導要領(第5学年 内容(3) 我が国の工業生産)の内容をもとに、目標と評価規準を次のように設定します。
| 観点 | 評価規準(例) |
|---|---|
| 知識・技能 | 貿易や運輸は、原材料の確保や製品の販売などにおいて、工業生産を支える重要な役割を果たしていることを理解している。地図帳や統計などの資料で、交通網の広がりや外国との関わりを調べ、まとめている。 |
| 思考・判断・表現 | 交通網の広がりや外国との関わりなどに着目して問いを見いだし、貿易や運輸の様子を捉え、それらの役割を考え、表現している。 |
| 主体的に学習に 取り組む態度 |
貿易や運輸について、予想や学習計画を立てて主体的に追究し、これからの貿易や運輸のあり方について考えようとしている。 |
※学習指導要領 社会 第5学年 内容(3)「我が国の工業生産」をもとにした例です。
単元計画(全6時間)
公開されている指導案では、この小単元を全5〜6時間で計画している例が見られます。ここでは、全6時間の例を紹介します。時数は学校の年間指導計画と指導書で確認してください。
| 時 | 主な学習活動 | 子どもが話す工夫 |
|---|---|---|
| 1時 | 身の回りの外国製品や、自動車の輸出の資料から学習問題をつくる | 「家の中に外国から来た物はいくつある?」を出し合う |
| 2時 | 日本の主な輸出品・輸入品と、相手国を調べる | 品目をかくしたグラフで、何が多いかを予想する |
| 3時 (本時) |
輸出入品がどうやって運ばれているかを調べ、運輸の役割を考える | 「飛行機? 船?」の予想から、運ぶ物と運び方を結びつける |
| 4時 | 港や空港、高速道路など、国内の交通網と工業地域の関係を調べる | 地図帳で、工業地域と港・高速道路の位置を重ねる |
| 5時 | 原料を輸入して製品を輸出する貿易の特色と課題を考える | 貿易の流れを図に整理し、説明し合う |
| 6時 | これからの貿易や運輸のあり方について考え、学習をまとめる | 「輸入が止まったら?」から、自分の考えを伝え合う |
本時の指導案(輸出入品はどうやって運ばれる?)
本時は、輸出入品がどのように運ばれているかを調べ、運輸の役割を考える時間です。資料を見る前に「外国から来る物は、飛行機と船、どちらで多く運ばれている?」と予想させ、立場を決めてから話し合います。答えを確かめて終わるのではなく、「なぜ船が多いのか」「飛行機で運ぶのはどんな物か」を、運ぶ物の特徴と結びつけて考えることを大切にします。
- 本時の目標:輸出入品の輸送手段を調べ、運ぶ物の特徴によって輸送の方法が選ばれていることを捉え、運輸が工業生産を支えていることを考える。
- めあて(子どもの言葉で):輸出や輸入の品物は、どうやって運ばれているのか調べよう。
- 準備する物:輸送手段別の貿易量の資料、コンテナ船・タンカー・貨物機の写真、主な輸出入品の写真カード(原油・鉄鉱石・自動車・半導体・生鮮品など)、ネームプレート
| 段階 | 学習活動と主な発問 | 予想される子どもの反応 | 留意点・話す工夫 |
|---|---|---|---|
| 導入 (7分) |
①前の時間に調べた主な輸出入品をふり返る。 ②めあてを確かめる。 発問:外国から来る物は、飛行機と船、どちらで多く運ばれている? |
「飛行機のほうが速いから飛行機」「重い物は船」「半分ずつくらい?」 | ネームプレートで立場を黒板に表す。予想の理由も一言そえさせる。 |
| 展開1 (13分) |
③輸送手段別の貿易量の資料を見て、予想とくらべる。 発問:なぜ、ほとんどが船で運ばれているのだろう? |
「99%以上が船だ!」「原油や鉄鉱石は重くて量が多いから」「船のほうが一度にたくさん運べる」 | コンテナ船やタンカーの写真で、大きさや運べる量を実感させる。 |
| 展開2 (17分) |
④品物カードを「船で運ぶ」「飛行機で運ぶ」に分け、理由を話し合う。 発問:飛行機で運ぶのは、どんな物? |
「半導体は軽くて高いから飛行機」「魚や花は新鮮さが大事だから飛行機」「自動車は大きいから船」 | 班でカードを分けさせ、分け方がちがう物は全体で話し合う。「重さ・量・急ぎ・値段」の観点を板書に整理する。 |
| まとめ (8分) |
⑤分かったことをまとめる。 ⑥港に着いた後、品物はどう運ばれるかを予想する。 |
「運ぶ物によって、船や飛行機を使い分けている」「港からはトラックで工場に運ぶのかな」 | まとめは子どもの言葉で書く。次の時間の「国内の交通網」につなげる。 |
板書の例
- 飛行機が 速いから 多い
- 重い物は 船
- 半分ずつ くらい?
- 重くて 量が多い物は 船
- 軽くて 高い物・急ぐ物は 飛行機
- 港からは トラックで?
板書では、左に予想、真ん中に調べたこと、右に分かったことを書きます。真ん中は船と飛行機の写真を左右に貼り、その下に品物カードを分けて貼ると、運ぶ物の特徴と運び方の関係が目で見て分かります。
ワークシート
本時で使えるワークシートです。予想を選ぶ欄、品物を船と飛行機に分ける表、運び方の特徴をくらべる表、まとめとふり返りの欄があります。印刷してそのまま使えます(A4)。

5年生が主体的に話し合う5つの工夫
「〜は、〜だから、船(飛行機)で運ぶと思います。」
「〇〇さんとはちがって、〜は急いで運ぶ必要があるので、飛行機だと思います。」
つまずきやすいポイントと手立て
| つまずき | 手立て |
|---|---|
| 速い飛行機がいちばんよいと考える | 運賃や運べる量の資料を示し、速さ以外の観点にも目を向けさせる。 |
| 重さでくらべた割合と、金額でくらべた割合を混同する | 資料の単位(トン・円)を確かめさせる。高い物ほど飛行機で運ばれることを話し合いにつなげる。 |
| 貿易と工業生産のつながりが見えない | 前時の「原料を輸入して製品を輸出」の資料と並べ、輸入した原料が工場で製品になる流れを確かめる。 |
| 港から先の輸送に目が向かない | まとめで「港に着いた後は?」と問い、次時の国内の交通網につなげる。 |
貿易の統計は、毎年変わります。教科書の資料に加えて、財務省の貿易統計や日本海事広報協会の資料など、新しい数字を確かめてから授業で使いましょう。
先生たちの実践例
実践1|コンテナ船の「驚き」から学習問題をつくる(徳島県鳴門市の撫養小学校での研究授業)
元筑波大学附属小学校副校長の長谷川康男先生が、徳島県鳴門市の撫養小学校の5年生で行った研究授業の指導案(小単元6時間の1時目)です。輸入が止まったときのコンビニの写真から生活と輸入のつながりに気づかせ、コンテナ船の写真を見せます。積まれたコンテナを積み上げると富士山の何倍にもなる高さや、船員が4〜6か月も船で生活することへの驚きから、「どんな荷物を、どんな仕事をして運んでくるのだろう」という学習問題をつくっています。資料には、日本の貿易の約99.6%が海上輸送であることも示されています。
数字をそのまま見せるより、「富士山の何倍?」のように身近な物とくらべると、5年生でも運ぶ量の大きさを実感できます。
実践2|品目をかくしたグラフで予想を立てる(岩手県の実践)
岩手県の千葉真紀子先生の指導案(全5時間)では、主な輸出入品のグラフを品目をかくして提示し、「何がいちばん多いと思う?」と予想させてから読み取らせています。品目を「工業製品」と「原料・燃料」に分けて整理し、個人で読み取ったことをグループで確かめ合うことで、複数の資料を関連づけて日本の貿易の特色を捉えられるようにしています。

よくある質問
Q. この小単元は何時間扱いが多いですか?
A. 公開されている指導案では、全5〜6時間で計画している例が見られます。工業生産の大単元のまとめとして扱うことが多いので、学校の年間指導計画と指導書で確認してください。
Q. 「99.6%が船」は、どんな数字ですか?
A. 日本の貿易量を重さ(トン)で見たときの、海上輸送の割合です。金額で見ると、半導体など軽くて高い製品が飛行機で運ばれるため、飛行機の割合が大きくなります。授業では、どちらの数字かを子どもと確かめましょう。
Q. 港や空港が近くにない学校では?
A. 写真や動画、地図帳で港や空港の様子を調べられます。身の回りの外国製品の産地を調べ、「どこの港から、どうやって届いたか」を考えさせると、自分ごととして学べます。
Q. これからの貿易の課題は、どう扱えばいいですか?
A. 原料や燃料の多くを輸入にたよっていることや、輸送にかかわる人手不足などを資料で示し、「輸入が止まったらどうなる?」と考えさせる方法があります。子どもが自分の考えをもてるよう、複数の立場の資料を用意しましょう。

