【算数6年生】「分数×分数(教育出版)」大人しいあの子が見せた意識の変換 宮崎県小学校教諭 菊田大樹

「分数×分数」(教育出版・6年算数)は、計算の仕方を理解させるだけで終わりがちな単元です。しかし、宮崎県の小学校教諭・菊田大樹先生は、この「分数×分数(教育出版)」の単元を通して、これまで目立つことのなかった一人の子ども・Aさんに劇的な変容をもたらしました。では、いったい何が彼女を変えたのでしょうか。そこで本記事では、「脱・教師主導」を掲げた菊田先生の実践から、子どもの主体性を引き出す授業づくりのポイントを、図解とともに徹底解説します。さらに、明日から教室で使えるヒントも満載です。

菊田 大樹 先生(宮崎県小学校教諭)

授業てらす チーム算数所属。現在は宮崎市の公立小学校で教鞭を執りながら、「脱・教師主導」をテーマに、子どもが自ら学び方を選択できる算数授業を実践。とくに、子どもの主体性を引き出す単元構成と教材開発に定評がある。

「分数×分数(教育出版)」の前のAさんはどんな子だったか

この実践の主役は、6年生のAさんです。まず、菊田先生が「分数×分数(教育出版)」の授業を始める前のAさんの姿から見ていきましょう。

以前のAさんは、目立つことのない非常に穏やかな児童でした。そして教師の指示に対しては非常に従順で、関わる相手は1~2人の特定の仲間に限られていました。つまり、言われたことを淡々とこなすため、教師にとっては「手のかからない子」だったのです。しかし、その裏側では彼女自身の「意思」が表面に出てこない状態が続いていました。

⚠ 「手のかからない子」の落とし穴

たとえば、指示に従順で課題を淡々とこなす子は、教師の目から見ると「問題なく学習している子」に映ります。ところが、その状態は本人の意思や問いが表に出ていないサインでもあるのです。その結果、見過ごされたまま卒業を迎えてしまう子も少なくありません。

菊田先生はこのAさんの姿に問題意識を持ち、「分数×分数(教育出版)」の単元を一つのきっかけに、授業のあり方そのものを大きく変えていきます。

「分数×分数(教育出版)」で算数授業をどう変えたのか

そこで菊田先生が掲げたのが「脱・教師主導」というテーマです。つまり「分数×分数(教育出版)」の授業を、子どもたちが自ら学び方を選択できる環境へと転換していきました。

📋
これまでの授業

授業 → 練習問題 → AIドリル
つまり一律の流れで全員が同じことを進める。

🎨
菊田先生の授業

授業 → 選択学習
つまり「どう学ぶか」を子どもに委ねる。

「分数×分数(教育出版)」授業転換の3つの柱

1
学習方法の選択

まず従来の「授業→練習→AIドリル」という一律の流れから、「授業→選択学習」という形式に変更した。

2
主体性の委ね

次に子ども自身に「どう学ぶか」を委ねる時間を設定。学び方そのものを選べる自由を保障した。

3
教師からの挑戦状

さらに単に問題を解くだけでなく、考え方やポイントを画用紙に「自由にまとめる」という選択肢も提示した。

この実践の背景には、子どもの主体性を重視する近年の教育観の転換があります。文部科学省が示す学習指導要領でも、「主体的・対話的で深い学び」が強く求められていますね。

「分数×分数(教育出版)」でAさんに起きた4つの劇的な変化

すると、自ら学び方を選択できるようになったAさんの姿勢に、劇的な変化が現れ始めました。たとえば、以下の4つの変容です。

1
自分なりの表現

まず丸や三角などの図形を用いて構造化したり、色を使って視覚的に分類したりして、自分なりの整理を行うようになった。

2
教科書の枠を超えた探究

さらに日本と韓国の計算方法を比較し、共通点を発見したり、韓国語の用語まで調べたりするなど、教科書以上の学びに発展した。

3
意識の変革

そして目的が「正解すること」から、自分の考えを誰かに「届ける・伝える」ことへと変化した。

4
周囲への波及

最後に彼女の熱量はクラス全体に広がり、「私もやってみよう」という主体的な空気を生み出していった。

BEFORE 正解すること 意識の変換 AFTER 届ける・伝える このように、Aさんの算数への向き合い方が根本から変わっていった

変容を整理する比較表

観点 授業転換前のAさん 「分数×分数」授業後のAさん
学習姿勢 指示に従順、淡々とこなす 自分で学び方を選び、表現する
関わる相手 特定の1〜2人に限定 クラス全体に学びが波及
学びの目的 正解すること 誰かに届ける・伝えること
探究の範囲 教科書の範囲内 日韓の計算比較など教科書を超える

学びと将来の夢がつながった瞬間

さらに、Aさんの学びの変化は、彼女自身の将来の夢とも深く結びついていきました。つまり「分数×分数(教育出版)」の授業が、単なる教科の学習を超えた意味を持ち始めたのです。

🌟 Aさんの夢と学びの重なり
  • まず将来の夢:介護士になりたい。
  • 次に在り方の重なり:「相手に分かりやすく伝える」という算数での行為が、彼女の目指す「誰かのために動く介護士」としての理想の姿と重なった。
  • そして夢へのステップ:算数の授業が、単なる知識の習得ではなく、彼女の夢を実現するためのステップへと昇華した。
算数の授業が、彼女にとって「正解を出すための時間」から、「将来の自分につながる学びの時間」へと変わっていった。つまり、教科の枠を超えた人格的な学びが、教室の中で確かに起きていたのです。 ― 菊田大樹 先生(実践の振り返りより)

こうした「キャリア教育」と教科指導の重なりは、文部科学省のキャリア教育の理念とも合致するものです。

プレゼンとフィードバックから得られた指導観の磨き

ところで、菊田先生はこの「分数×分数(教育出版)」の実践を、授業てらすの中でプレゼンテーションし、全国の先生方からフィードバックを受けました。その結果、得られた最大の学びは「具体から抽象、そして再具体化へ」というプロセスでした。

小学校教師ならではの「学びの遅さ」を超える

小学校教師は多くの場合、様々な教科を受け持ち、毎年学年が変わります。したがって実践をしても、次に同じ学年・同じ単元を担当するまでに長い時間がかかります。しかし、授業てらすで実践をまとめ、プレゼンテーションし全国の先生方からフィードバックしてもらうことで、具体的な実践が抽象的で本質的な指導観へと磨かれていくのです。

①具体の実践 分数×分数の授業 ②抽象化 本質的な指導観 ③再具体化 他教科に応用 このように具体的実践は、抽象化を経て他の単元・教科で応用可能な「指導力」へと変わる

つまり、抽象的で本質的な指導観は特定の単元に留まらず、別の単元や教科でも応用可能なものとなります。その結果、教師の指導力そのものを向上させてくれるのです。

✅ 振り返ることで得られる3つの価値
  • まず抽象化:実践の本質をつかむ視点が手に入る。
  • 次に転用可能性:他の単元・教科にも応用できる指導観になる。
  • そして時短効果:振り返ることで、逆により短時間で質の高い授業づくりが可能になる。
以前は「忙しいから授業を振り返る時間がない」と思っていました。しかし授業てらすで振り返ることで、逆により短時間かつ質の高い授業作りが少しずつできるようになってきています。 ― 菊田大樹 先生(授業てらす チーム算数)

まとめ|「分数×分数(教育出版)」が拓く子ども主体の授業

🌱 この記事のポイント

このように「分数×分数(教育出版)」という一つの単元が、Aさんという子どもの人生と、菊田先生自身の指導観を大きく変える舞台となりました。つまり、教師主導の一律な授業から、子どもが学び方を選択できる授業へ転換すること――そしてその小さな変化が、子どもの「正解すること」から「届ける・伝える」への意識変換を引き起こすのです。

したがって明日からの算数授業で、ぜひ子どもたちに「学び方の選択肢」を渡してみてください。きっと、教室の中の「大人しいあの子」の中にも、まだ見ぬ熱量が眠っているはずです。

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