「どうしたい?」という問いかけから始まる授業があります。 6年生算数「対称な図形」のまとめ場面で行われた今回の実践では、教師が説明するのではなく、子どもたちのつぶやきや対話から学びが動き出しました。 授業を提案したのは授業てらす算数チームリーダーのサトシ先生です。 本記事では、「頂点の数=対称の軸の数」というきまりにたどり着くまでの学びの過程を紹介します。
対称な図形 授業|6年算数「どうしたい?」と聞いてみたら
線対称・点対称を学んだあとの学習を、子ども主体に変える小さな提案です。はじめに図形をバラバラに提示します。続いて、教師は黙って待ちます。最後に「どうしたい?」と問いかけることで、対話と発見が動き出します。
▲ 授業てらす算数チームリーダー サトシ先生による提案授業
1. 提案の概要
この提案は、6年生「対称な図形」の単元で、これまで学んできた線対称・点対称を見直す時間に位置づけられます。新しい知識を教える場面ではありません。既習の図形を、対称という視点でもう一度捉え直すまとめの時間です。
サトシ先生には、「教師がすべて与える展開では、主体的な学びになりにくい」という課題意識がありました。そこで、教科書の吹き出しに書かれている気づきを、子ども自身から引き出す形へと組み替えました。なお、この提案は授業てらす算数チームの定例セッションで共有されたものです。
2. 教科書の流れとの違い
まず、教科書の標準的な展開を確認します。多くの場合、次のような流れで学習が進みます。
- 三角形や四角形を提示する
- 線対称や点対称かどうかを調べる
- 対称の軸や中心を見つける
- 正多角形について考える
近年の教科書には、「線対称でも点対称でもある図形があるね」のような気づいてほしいポイントが、吹き出しで示されています。一方で、それらを教師が読み上げてしまうと、学習者は受け身になりがちです。だからこそ、サトシ先生は展開そのものを問い直しました。
3. 問いを生む仕掛け
そこで、どのように授業を組み立てたのでしょうか。仕掛けはとてもシンプルです。
提示:図形をバラバラに出す
はじめに、これまで学習してきた三角形と四角形を、整理せずバラバラに黒板に貼ります。整然と並べないことが重要なポイントです。
待つ:つぶやきを受け止める
次に、教師は何も言わずに待ちます。すると、「これ直角三角形だね」「全部正三角形じゃないよ」「今日も線対称かな」と、自然なつぶやきが出てきます。
問う:子どもに委ねる
反応が生まれたところで、「どうしたい?」と問いかけます。この一言によって、学習の進み方を考えるきっかけが生まれます。
4. 対話から発見へ
その後、実際の場面では、最初から対称の話に進んだわけではありません。「面積を求めたい」という意見も出ました。その後、「仲間分けしたい」という声が生まれ、学習は自然に図形の性質へ向かっていきます。
- 提示直後には、面積や形に関する多様な反応が出る。
- やがて、「仲間分けしたい」という提案が生まれる。
- 「全部、線対称じゃないよ」という揺さぶりが起きる。
- 図形を並べ直し、折り曲げながら対称の軸を確かめる。
- 正方形では「斜めでもいける」という発見が出る。
- 他の図形にも目が向き、性質を探る流れが広がる。
この場面で注目したいのは、教師が無理に軌道修正していない点です。子どもから出た言葉を起点にして、自然と線対称・点対称の話へ進んでいきました。
5. 見つかったきまり
さらに、正方形の「斜めでもいける」という発見をきっかけに、他の図形でも対称の軸を探す動きが広がりました。さらに3角形・4角形・5角形・6角形と進めていくうちに、ある子が声をあげます。
「決まりがあるよ。決まりが見つけたよ。」
その発言を受けて、サトシ先生は「決まりがあるの?」と問い返します。すると、次のきまりが子どもの言葉で表されていきました。
つまり、教師が最初から「正多角形の性質を調べましょう」と指示したわけではありません。むしろ、「どうしたい?」から始まった対話の積み重ねが、重要な性質の発見へつながったのです。
6. 実践の留意点
提案の最後に、サトシ先生は「どうしたい?」から始めることで生まれるものを整理しました。
さらに、図形を「数学の目で見る力」を育てたいという願いも語られました。ただし、提案者自身が強調している点があります。
7. 参加者の視点
なお、提案を見た参加者からは、2つの大切な指摘が寄せられました。どちらも、この実践をより深く理解するうえで欠かせない視点です。
① 問いの前にある応答関係
一人目の参加者からは、「いきなり聞けばうまくいくわけではない」という指摘がありました。大切なのは、図形を提示した瞬間からつぶやきを丁寧に受け止めることです。その積み重ねの上で初めて、「どうしたい?」という問いかけが機能します。
すでに教材に目が向き、応答関係が成立している。そのうえで教師が問いを投げかける点に、この実践の核心があります。
② 他教科への応用
別の参加者からは、算数だけでなく、国語でも教材文を提示したあとに使えるのではないか、という提案が出されました。ただし、どの教科であっても、反応を引き出すための教材研究が前提になります。したがって、教科の特性を見極めた仕掛けがあってこそ、主体性を引き出す問いになるのです。
8. まとめ
今回の提案は、特別な教具も最新のICTも必要としません。必要なのは、図形をバラバラに、黙って提示することです。さらに、つぶやきを受け止めながら「どうしたい?」と問いかけます。
もちろん、この一言だけで授業が変わるわけではありません。背景には、応答関係と教材を見極める教師の研究があります。まずは明日の1場面から、子どもの声を起点にした展開を試してみてはいかがでしょうか。
参考リンク
※本記事は授業てらす公式YouTube動画の内容をもとに構成しています。
