「楽しい」が「愉しい」に変わる!
1年間を期待できる算数授業とは
子供が「もっと考えてみたい」と感じる算数授業をつくるために、教師は何を大切にすればよいのでしょうか。
※画像URLを、授業風景や黒板、子供たちが学び合う写真に差し替えてください。
算数の授業で、子供たちが「楽しかった」と言うことがあります。
もちろん、それは教師にとってうれしい言葉です。しかし、そこで一度立ち止まって考えてみたいことがあります。
その「楽しい」は、ただ活動がにぎやかだったからでしょうか。ゲームのような要素があったからでしょうか。それとも、子供自身が「考えることそのもの」に面白さを見いだしていたのでしょうか。
算数授業で本当に大切にしたいのは、単なる「楽しい」から、子供の内側から湧き上がる「愉しい」へと学びが変わっていくことです。
本記事では、「楽しい→愉しいに変わる!1年間を期待できる算数に」というテーマをもとに、子供が主体的に算数を学び続けるための授業づくりについて考えていきます。
この記事で考えたいこと
- 算数授業における「楽しい」と「愉しい」の違い
- 子供が主体的に学びたくなる授業のつくり方
- 間違いを学びに変える教師の関わり
- 1年間を期待できる算数授業にするための視点
「楽しい算数」で終わっていませんか?
算数の授業を楽しくしようとするとき、教師はさまざまな工夫をします。
具体物を使う。
ゲーム性を入れる。
ペアやグループで話し合う。
ICTを活用する。
生活場面と結びつける。
こうした工夫は、もちろん大切です。子供たちが「やってみたい」と思える入り口をつくることは、算数嫌いを生まないためにも欠かせません。
しかし、活動が楽しいだけで終わってしまうと、子供の学びは深まりにくくなります。
たとえば、授業後に子供が「ゲームが楽しかった」と言ったとします。
その言葉の中に、算数としての発見があるでしょうか。
「どうしてそうなるのかが分かった」
「友達の考えを聞いて、自分の考えが変わった」
「もっと別の方法でも解けそうだと思った」
「次の問題も自分で考えてみたい」
こうした言葉が出てきたとき、算数の授業は単なる活動の楽しさを越えて、学びそのものの愉しさへと近づいていきます。
活動の盛り上がりだけでなく、子供の思考が動いているかを見取ることが大切です。
「楽しい」と「愉しい」の違い
ここで大切にしたいのが、「楽しい」と「愉しい」の違いです。
楽しい
外から与えられた活動や雰囲気によって生まれることが多い感覚です。
ゲーム、活動、盛り上がりなどによって生まれます。
愉しい
自分の内側から生まれてくる感覚です。
考えること、分かること、つながることの面白さから生まれます。
算数でいえば、次のような状態です。
「先生に言われたから解く」のではなく、
「自分で考えてみたい」と思う。
「正解したからうれしい」だけではなく、
「考え方がつながったから面白い」と感じる。
「友達と同じ答えになった」で終わるのではなく、
「友達と違う考え方なのに、同じ答えになるのが不思議だ」と思う。
このように、子供が算数の中に問いや発見を見いだしていくとき、授業は「楽しい算数」から「愉しい算数」へと変わっていきます。
ここがポイント
- 「楽しい」は活動の面白さから生まれる。
- 「愉しい」は考えることの面白さから生まれる。
- 算数授業では、活動の楽しさを学びの愉しさへつなげることが大切。
1年間を期待できる算数にするために
4月や新学期の算数授業で大切なのは、子供たちに「この1年間、算数をがんばらなければならない」と思わせることではありません。
「自分の考えを出してもよさそうだ」
「間違えても、そこから学べそうだ」
と思える空気をつくることです。
年度初めの算数では、子供が「この教室では考えていい」と感じられる空気をつくることが大切です。
安心感があるからこそ、子供は自分の考えを出すことができます。
算数に苦手意識をもっている子供は少なくありません。
その子たちにとって、算数は「正解できるかどうか」を試される時間になりがちです。すると、子供は失敗を避けるようになります。自分の考えを出さず、先生の説明を待つようになります。
しかし、本来の算数は、答えを早く出すだけの教科ではありません。
数や図形の関係を見つける。
きまりを考える。
友達の考えと比べる。
自分の考えを説明する。
よりよい方法を探す。
こうした過程そのものに、算数の面白さがあります。
だからこそ、年度初めの算数では、教師が「正解すること」以上に、「考えること」「表すこと」「比べること」「問い直すこと」を価値づけていく必要があります。
子供が主体的に学ぶ算数授業のポイント
子供が主体的に学ぶ算数授業をつくるためには、教師がすべてを教え込むのではなく、子供が「自分で考えたくなる余白」を残すことが大切です。
たとえば、問題を提示したあとに、すぐに解き方を説明しない。
明日の授業で使える問い
「どこから考えられそう?」
「何が分かれば解けそう?」
「前に学んだことと似ているところはある?」
「別の考え方をした人はいない?」
「その方法は、いつでも使えるのかな?」
このような問いによって、子供は問題の中に入り込んでいきます。
大切なのは、教師が正解への道筋を先に示しすぎないことです。子供が迷ったり、試したり、友達の考えに驚いたりする時間の中に、主体的な学びは生まれます。
板書やノートには、答えだけでなく「考え方の道筋」が残るようにします。
間違いを「学びの入口」にする
算数授業では、間違いの扱い方がとても重要です。
子供が間違えたとき、教師がすぐに「違います」と処理してしまうと、子供は次第に発言しにくくなります。
しかし、間違いの中には、授業を深める大切な手がかりがあります。
間違いを生かす問い返し
「どうしてそう考えたの?」
「どこまでは合っていそう?」
「この考え方を使うと、どこで困る?」
「友達の考えと比べると、何が違う?」
このように扱うことで、間違いは失敗ではなく、考えを深める材料になります。
算数が愉しくなる教室では、正解した子だけが活躍するのではありません。途中まで考えた子、迷っている子、友達の考えを聞いて納得した子も、学びの中で価値づけられます。
その積み重ねが、「この教室では考えていい」「間違えても学べる」という安心感を生み出します。
教師が大切にしたい見方
- 間違いは失敗ではなく、学びを深める入口である。
- 途中までの考えにも価値がある。
- 子供の考えをすぐに裁かず、教室全体の学びにつなげる。
「できた」で終わらせず、「なぜ?」へ向かう
算数の授業では、答えが出るとそこで終わってしまうことがあります。
しかし、子供の学びを深めるためには、「できた」のあとが大切です。
答えの先へ向かう問い
「なぜ、その方法でできるのか」
「ほかの数でも同じことが言えるのか」
「もっと簡単な方法はないのか」
「図で表すとどうなるのか」
「友達の考えと自分の考えは、どこが同じなのか」
こうした問い返しによって、子供は答えの奥にある数学的な見方・考え方に気づいていきます。
ここに、算数授業を「愉しい」ものに変えていく鍵があります。
教師ができる「場づくり」
子供が算数を愉しむためには、教師の場づくりが欠かせません。
まず大切なのは、子供の考えを急いで評価しすぎないことです。
教師がすぐに「正しい」「間違い」と判断するのではなく、子供同士が考えを比べられるようにします。
考えをつなげる教師の言葉
「同じ考えの人はいる?」
「少し違う考え方をした人は?」
「この考えのよさはどこ?」
「この方法で困ることはある?」
こうしたやり取りによって、子供の考えは教室全体の学びになります。
また、教師は子供の言葉を算数の言葉へとつないでいく役割も担います。
子供の素朴なつぶやきの中にある数学的な価値を見取り、
「それは、きまりを見つけているんだね」
「今、図と式をつなげて考えていたね」
「友達の考えを使って、自分の考えを変えたんだね」
と価値づけていく。
この教師の言葉によって、子供は自分の学び方に気づいていきます。
教師の役割は、正解を急がせることではなく、子供の考えを価値づけることです。
「1年間を期待できる算数」とは
1年間を期待できる算数とは、単に楽しい活動が毎時間用意されている授業ではありません。
子供が、
「自分の考えを出してみたい」
「友達の考えを聞いてみたい」
「もっとよい方法を探してみたい」
「分からないことを考えるのは面白い」
と思える授業です。
そのような教室では、算数が得意な子だけが前に出るのではありません。
苦手な子も、途中までの考えを出すことができます。
友達の考えを聞いて、分かり直すことができます。
自分なりの表し方で、問題に向かうことができます。
算数を通して、子供たちは単に計算技能を身につけるだけではありません。
考えること。
比べること。
説明すること。
問い直すこと。
友達と学び合うこと。
その経験を積み重ねていきます。
1年間を期待できる算数にするために
- 子供が自分の考えを出せる教室にする。
- 正解だけでなく、考え方を価値づける。
- 間違いを学びの入口として扱う。
- 答えのあとに「なぜ?」を問う。
おわりに
算数授業で大切なのは、子供に「楽しい活動」を与え続けることではありません。
子供自身が、算数の中に面白さを見つけていくことです。
「分かった」
「できた」
「なるほど」
「そういうことか」
「もっと考えてみたい」
このような言葉が教室に生まれるとき、算数は子供にとって、外から与えられる「楽しい」ものではなく、自分の内側から湧き上がる「愉しい」ものへと変わっていきます。
1年間の算数授業は、最初の出会い方で大きく変わります。
子供が「今年の算数は楽しみだ」と思えること。
そして、その楽しみが、やがて「考えることは愉しい」という実感へ変わっていくこと。
そこに、子供が主体的に学ぶ算数授業の出発点があります。
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算数の授業を「楽しい」で終わらせていませんか。活動が盛り上がることは大切ですが、本当に目指したいのは、子供自身が考えることの面白さを見いだす「愉しい算数」です。本記事では、「楽しい→愉しいに変わる!1年間を期待できる算数に」というテーマをもとに、子供が主体的に学び続ける算数授業づくりのポイントを考えます。
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