「消防の単元の指導案を書かなくちゃいけない」「通信指令室の時間が、資料を読んで線を引くだけで終わってしまう」「見学に行けないので、子どもが消防を身近に感じられない」。3年生の社会を担当する先生から、よく聞く悩みです。
この記事では、3年社会の単元「火事からくらしを守る」から、119番の通報と通信指令室のはたらきを調べる時間の指導案を、子どもが主体的に話し合う授業を軸にまとめました。教材研究のポイント、単元計画、本時の展開と板書例、そのまま使えるワークシート、先生たちの実践を紹介します。

- 「消防車がすぐ来るのはなぜ?」を問いに変える教材研究のポイント
- 単元の目標と評価規準
- 単元計画(全8時間)
- 本時(119番と通信指令室)の指導案と板書例、ワークシート
- 3年生が主体的に話し合う5つの工夫と、先生たちの実践例
この記事は、全国の小学校教員が実践を学び合うオンラインコミュニティ「授業てらす」が、公開されている指導案や先生たちの実践をもとに編集しています(2026年10月時点)。
消防の単元の教材研究
3年生の子どもは、「119番に電話すると、近くの消防署に直接つながる」「火事は消防士さんだけが消す」と思っていることが多いです。実際には、119番は通信指令室(指令センター)につながり、そこから消防署だけでなく、警察・病院・ガス会社・電力会社・水道局などにも連絡が入ります。この「思っていたのとちがう」が、本時の話し合いのきっかけになります。
119番から、どこへつながる?
通信指令室を中心に、たくさんの人が同時に動く
| 消防署 | 消防車・救急車が出動する ポイント:近くの消防署だけでなく、ほかの署にも応援を出す |
|---|---|
| 警察署 | 交通整理をして、消防車が通りやすくする ポイント:「なぜ警察も?」が、いちばん話し合いが生まれる |
| ガス会社・電力会社 | ガスや電気を止めて、火が広がらないようにする ポイント:火を「消す」以外の仕事があることに気づく |
| 病院・水道局・消防団 | けが人を受け入れる/水を多く出す/地域で消火を手伝う ポイント:地域の人も守る側にいる |
大切なのは、連絡先を覚えることではなく、それぞれが何のために動くのか(役割)と、なぜ同時に連絡するのか(早さ)に目を向けさせることです。関係図で線を引くだけでなく、「もし警察に連絡がなかったら?」と考えると、協力していることの意味が子どもの言葉で出てきます。
ほかの教科の指導案は小学校算数 指導案一覧や3年理科「じしゃくのふしぎ」指導案でも紹介しています。
単元の目標と評価規準
学習指導要領(第3学年 内容(3) 地域の安全を守る働き)の内容をもとに、目標と評価規準を次のように設定します。
| 観点 | 評価規準(例) |
|---|---|
| 知識・技能 | 消防署などの関係機関は、地域の安全を守るために相互に連携して緊急時に対処する体制をとっていることや、地域の人々と協力して火災の防止に努めていることを理解している。見学や資料で必要な情報を集め、読み取ったことを白地図や関係図にまとめている。 |
| 思考・判断・表現 | 施設・設備などの配置、緊急時への備えや対応に着目して問いを見いだし、関係機関や地域の人々の諸活動をとらえ、相互の関連や従事する人々の働きを考え、表現している。地域の一員として自分にできることを考えたり選択・判断したりしている。 |
| 主体的に学習に 取り組む態度 |
火災から地域の安全を守る働きについて、予想や学習計画を立てて主体的に追究し、学んだことを生活に生かそうとしている。 |
※学習指導要領 社会 第3学年 内容(3)「地域の安全を守る働き」をもとにした例です。火災と事故(警察)のどちらかに重点を置いて扱います。
単元計画(全8時間)
公開されている指導案では、消防の単元を全8時間前後で計画している例が多く見られます。ここでは、全8時間の例を紹介します。時数は学校の年間指導計画と指導書で確認してください。
| 時 | 主な学習活動 | 子どもが話す工夫 |
|---|---|---|
| 1時 | 市や町の火事の件数、消火活動の写真や動画から気づいたことを話し合い、学習問題をつくる | 「火事が起きると、だれが、どんなことをするのだろう」を出し合う |
| 2時 | 学習問題の予想を立て、調べる計画を立てる | 「消防士」「警察」「近所の人」など、予想をカードで分類する |
| 3時 | 消防署の設備や、消防士の一日・訓練の様子を調べる | 「24時間いつでも出動できるのはなぜ?」を考える |
| 4時 (本時) |
119番の通報が、どこにつながり、だれが動くのかを調べる | 「119番は近くの消防署につながる?」の予想から話し合う |
| 5時 | 学校や地域の消防設備(消火器・消火栓・防火水そうなど)を調べ、地図にまとめる | 見つけた場所を地図にはり、配置の工夫を話し合う |
| 6時 | 消防団や地域の人の取組を調べる | 消防団の人の話から「仕事がある人がなぜ?」を考える |
| 7時 | 関係機関と地域の人のつながりを関係図にまとめる | 線に「何をしてくれるか」を書きこみ、説明し合う |
| 8時 | 火事を防ぐために自分にできることを考え、標語やポスターにまとめる | 友達の考えを聞いて、自分の考えを選び直す |
本時の指導案(119番と通信指令室)
本時は、119番の通報がどこにつながり、だれがどのように動くのかを調べる時間です。資料を読む前に「119番の電話は、近くの消防署に直接つながる?」と予想させ、自分の考えと事実のずれから話し合います。連絡先を覚えることより、「みんなが同時に動くから早く消せる」ことに子ども自身が気づくことを大切にします。
- 本時の目標:119番の通報から出動までの流れを調べ、通信指令室を中心に関係機関が協力して、火事に素早く対応していることを理解する。
- めあて(子どもの言葉で):119番の電話のあと、だれが、どんなことをするのか調べよう。
- 準備する物:通信指令室の写真や動画、通報から出動までの流れ図、関係機関のカード(消防署・警察署・病院・ガス会社・電力会社・水道局・消防団)、ネームプレート
| 段階 | 学習活動と主な発問 | 予想される子どもの反応 | 留意点・話す工夫 |
|---|---|---|---|
| 導入 (7分) |
①消防署では24時間出動できるように準備していたことをふり返る。 ②めあてを確かめる。 発問:119番の電話は、近くの消防署に直接つながる? |
「近くの消防署につながる」「どこか別の所かな」「消防署の人が出ると思う」 | ネームプレートで立場を黒板に表す。予想の理由も一言そえさせる。 |
| 展開1 (15分) |
③通信指令室の写真や動画、流れ図から、通報のあとに連絡が入る所を調べる。 ④関係機関のカードを、通信指令室のまわりに並べる。 |
「指令室という所につながる」「警察にも連絡している」「ガス会社や電力会社にも!」 | 見つけた所を、ワークシートの関係図に書きこませる。調べる時間はペアで1つの資料を見る。 |
| 展開2 (15分) |
⑤それぞれが何をするのかを話し合う。 発問:どうして、こんなにたくさんの所へ同時に連絡するの? ゆさぶり:もし、警察に連絡がなかったら? |
「警察が車を止めないと、消防車が通れない」「ガスを止めないと、火が広がる」「みんな一度に動くから早い」 | 線の上に「何をしてくれるか」を書く。1つの機関を選んで、ないと困ることを班で考えさせる。 |
| まとめ (8分) |
⑥分かったことをまとめる。 ⑦ふり返りを書く。 |
「通信指令室が中心になって、いろいろな所が協力している」「早く消すために、同時に連絡している」 | まとめは子どもの言葉で書く。次の時間につなげ、「地域の人は何をしている?」と問いを残す。 |
板書の例
- 近くの消防署に つながる
- 消防署の人が 電話に出る
- 別の所に つながる?
- 警察は 交通整理
- ガス・電気を 止める
- 同時に動くから 早い
板書では、左に予想、真ん中に調べたこと、右に分かったことを書きます。真ん中は通信指令室を中心にカードを放射状に貼り、線の上にそれぞれの役割を書きこむと、7時の関係図づくりにそのままつながります。
ワークシート
本時で使えるワークシートです。予想、関係図(通信指令室とつながる所に「すること」を書く図)、「もし〜がなかったら?」を考える欄、まとめとふり返りの欄があります。印刷してそのまま使えます(A4)。

3年生が主体的に話し合う5つの工夫
「わたしは、〜につながると思います。わけは、〜だからです。」
「もし〜がなかったら、〜になって困ると思います。」
つまずきやすいポイントと手立て
| つまずき | 手立て |
|---|---|
| 119番は近くの消防署に直接つながると考える | 導入で予想させ、通信指令室の写真や動画で確かめる。予想と事実のずれを板書に残す。 |
| 火事は消防士だけが消すと考える | 警察・ガス会社・電力会社など、火を消す以外の仕事をする所に注目させる。 |
| 関係図が、線を引くだけの作業になる | 線の上に「何をしてくれるか」を書かせ、「もし〜がなかったら?」と問う。 |
| 地域の消防のしくみが教科書とちがう | 通信指令室の名前や連絡先は地域で異なる。事前に地域の消防本部のホームページや副読本で確かめておく。 |
119番に、いたずらや必要のない電話をしないことも、本時のふり返りで確かめておきましょう。本当に困っている人の通報がつながらなくなることを、子どもの言葉で考えさせると効果的です。
先生たちの実践例
実践1|防災プロジェクトで単元をつなぐ(茨城県教育研修センター 長期研修)
茨城県教育研修センターの長期研修で作成された新井麻理矢先生の指導案(全8時間)では、第1時に消火活動の動画と那珂市の火災情報から学習問題を立て、単元を通して「防災プロジェクト」を作る流れにしています。消防署の見学で「防災キッズ」に任命されることで意欲を高め、第5時には通信指令室の役割を調べて関係図にまとめ、「指令室を中心に機関が協力して素早く対応している」ことをとらえさせています。最後は、作った防災プロジェクトを消防署の人に見てもらい、家庭にも持ち帰って共有しています。
単元のはじめに「最後に何を作るか(標語・ポスター・プロジェクト)」を子どもと決めておきましょう。調べる目的がはっきりして、本時の資料の読み方も変わります。
実践2|関係図に「自分」を入れて双方向の矢印をかく(宮城県総合教育センター)
宮城県総合教育センターの単元計画と学習指導案(全8時間)では、第4時で通信指令室の様子や絵本から連絡の流れを調べ、第7時に関係図(イメージマップ)にまとめています。関係図には「自分」を加え、相手が自分たちにしてくれることと、自分ができることの両方を矢印で表す工夫をしています。地域の資料が少ない場合は、絵本や動画で補うことも示されています。

よくある質問
Q. 消防と警察、どちらを扱えばいいですか?
A. 学習指導要領では、火災と事故のどちらかに重点を置き、もう一方は簡単に扱うことになっています。どちらを中心にするかは教科書や学校の年間指導計画で確認してください。消防を中心にした場合も、本時のように警察との協力にふれておくと、事故の学習とつながります。
Q. 消防署の見学に行けない場合は?
A. 消防本部が公開している動画や写真、副読本、教科書の資料を使って調べる方法があります。ゲストティーチャーとして消防士や消防団の人に学校へ来てもらったり、オンラインで質問したりする例もあります。
Q. 「通信指令室」と「指令センター」、どちらの言葉を使えばいいですか?
A. 地域によって呼び方がちがいます。教科書の言葉を基本にしながら、自分たちの市や町の消防本部での呼び方も確かめておくと、子どもが地域のこととして考えやすくなります。
Q. 1時間で終わらないときは?
A. 展開1でカードを並べるところまで進み、「どうして同時に連絡するの?」の話し合いを次の時間の最初に回す方法があります。7時の関係図づくりと合わせて扱うこともできます。

