算数 交流 授業|3年生「聞き手を育てる」「山場をつくる」実践報告
授業てらす2026春フォーマンセル・算数チームBが2ヶ月で見つけた子ども主体の突破口
算数 交流 授業を、教師主導から子ども主体へ転換するために何が必要でしょうか。授業てらす「2026春フォーマンセル」の算数チームBで、2ヶ月間の実践に取り組んだ小学校3年生担任のお二人が、その突破口を報告しました。まず、鳥取県のリクさんは「聞き手を育てる」という視点から学級を大きく変えました。さらに、神奈川県の森さんは「発表会から交流へ」という発想の転換で、算数の話し合いに山場をつくる授業デザインを提案しています。
フォーマンセルとは|授業てらすの2ヶ月間集中研修
まず、この報告会の舞台となった「フォーマンセル」について整理しておきましょう。フォーマンセルは、授業てらすが運営する少人数チーム制の集中研修プログラムです。3〜4名の教員がチームを組み、約2ヶ月間、お互いの授業を見せ合い、フィードバックを重ねながら実践を積み上げていきます。
今回の算数チームBは、リーダーのタイガさんのもと、鳥取県のリクさん、神奈川県の森さんが小学校3年生担任として参加しました。とりわけ興味深いのは、森さんが「サロン外からの一般参加」で加わっている点です。つまり、授業てらすの外にいる先生にも門戸が開かれた研修プログラムということになります。
📌 算数チームBの基本情報
| プログラム | 2026春フォーマンセル(授業てらす) |
|---|---|
| チーム | 算数チームB |
| 期間 | 約2ヶ月 |
| メンバー | タイガさん(リーダー)、リクさん、森さん |
| 担当学年 | 小学校3年生 |
| 取り組み方法 | 相互の授業参観・指導案検討・実践のフィードバック |
リクさんの実践①|教師主導からの脱却
そもそもリクさんが抱えていた課題は、多くの若手教員が共感するものでした。話すことが好きな子どもは多いけれど、できる子が引っ張り、低位の子は取り残される。教師の指示が中心で、子ども自身が動く場面が少ない――そんな学級の姿からスタートしています。
⚠️ 1回目の授業で見えた課題
- 「図を使って」と教師が提示 → 子どもから図を書く必要性が引き出せない
- 板書と式・図が結びつかず、ただ書くだけの板書に
- 分かっている数人だけが発表 → 聞き手が育っていない
- 板書に子どもの声が残らない
一方で、リクさんはこの現状を「変えたい姿」として明確に言語化しました。目指す授業は、子ども主体で表現活動が起き、意味のある交流があり、低位の児童からも発言が出てくる算数の授業です。この課題認識こそが、次の変容の出発点になりました。
リクさんの実践②|「聞き手を育てる」問い返し
2ヶ月の実践の中で、リクさんが最も大きな変容として挙げたのが「聞き手を育てる」というアプローチでした。それまでは「話を聞きなさい」というお仕置きのような言葉が多かったといいます。しかし、それではその場限りで、聞く力は育ちません。
🎯 リクさんが実践した「聞き手を育てる」問い返し
- 子どもが発言する
- 教師が別の子に「今〇〇さん、キーワード何て言った?」と聞き返す
- 答えられたら「ちゃんと聞いてたね」と価値づける
- これを授業の中で何度も何度も繰り返す
この積み重ねによって、子どもたちの姿が変わっていきました。まず「聞いていないと分からない」という必要性を子ども自身が感じるようになります。さらに、「聞いていると分かるんだ」という実感が広がり、授業に前のめりになる子が増えていきました。
ただし、聞くことが難しい場面もあります。そんなとき、リクさんは子どもに「このままではダメだから、もう1回言ってほしい」と考えさせる場面をつくりました。なぜなら、教師が指示するのではなく、子ども自身が「聞き直したい」と思うことに意味があるからです。
💡 ポイント:問い返しは「聞いていない子への注意」ではなく、「ちゃんと聞いていたね」と価値づけるための仕掛けです。だからこそ、聞くことが難しい子も、少しずつ聞けるようになっていきます。
リクさんの実践③|ゲーム化と止めるタイミング
3回目の授業では、1万を超える数の大小を比べる単元をゲーム方式で展開しました。ここでリクさんが意識したのは、「例えば」「もしこうだったら」という思考を引き出す発問と、それを子どもの発言から拾って止めるタイミングです。
💬 授業で出てきた子どもの言葉
- 「もし9だったら、1番大きい位に入れた方が絶対勝つよね」
- 「7・8・9がまだあるから、とりあえず真ん中でいい。9が引きたい」
こうした「例えば」「もし〜だったら」の思考を、教師が意図的に止めて全体で共有していきます。
2回目の勝負では「1の位でも勝負になる」というルールに変え、子どもたちが自分でまとめの言葉を紡ぎ出す場面が生まれました。つまり、教師のまとめよりも、子どもから出てきた言葉のほうが授業のまとめとして機能したわけです。
図:算数 交流 授業を子ども主体に変える3つの視点
さらに印象的だったのは、ある女の子の変容エピソードです。特別勉強ができるわけではない普通の女の子が、時刻と時計の単元で自分の描いた図を黒板に書いたことをきっかけに、どんどん発表するようになりました。今ではクラスの発表を引っ張る存在です。塾に通っていない子だからこそ、その説明は低位の子にも分かりやすい。「聞き手を育てる」実践が、発言する子どもも変えていく典型例と言えるでしょう。
森さんの実践①|「発表会から交流へ」の発想転換
続いて、神奈川県の森さんの実践です。森さんが2ヶ月の学びから絞り込んで発表したテーマは、「発表会から交流へ」というものでした。
そもそも算数の交流といえば、「1つの答えやまとめにみんなでたどり着く」というイメージが強いのではないでしょうか。分からない子に対して分かる子が説明し、「もう一度説明してください」「分からない人いますか?」と確認する。森さん自身、これまでそのスタイルを大切にしてきたといいます。
⚠️ 従来の交流の課題
分かっている子が、一生懸命わからない子に説明する構図。
では、分かっている子にとっての交流の意味は、どこにあるのか?
この問いに森さんはぶつかりました。だからこそ、交流の意味を分かっている子にも作れないか、という発想の転換が生まれます。フィードバックを重ねる中でたどり着いたのが、次の視点でした。
森さんの実践②|交流の中に「山場」をつくる
森さんが提案した突破口が、交流の中に「山場」をつくるという発想です。山場とは、最初はみんな平坦な流れで進んでいる中で、「あれ、自分の考えだけでいいのかな?」「まだあるの?」と考えを揺さぶられる瞬間を指します。
🎬 3年生わり算「12÷3の問題づくり」で山場をつくるなら
- 自力解決:包含除の考え方はほぼ全員が書けている/等分除の考え方は2〜3人だけ
- 前半の交流:まず包含除をさらっと共有 →「同じでよかった」と安心する
- 山場:教師が「実は他の考えを持っている子がいるんだけど」と切り込む
- 2〜3人が等分除を発表:「え、まだあるの?」「どういうこと?」と揺さぶられる
- 後半の交流:「1つの式でも2つの問題が作れるんだ」と全体の考えがアップデートされる
ここで大切なのは、山場が単なる「盛り上がり」ではなく、子どもの考えがアップデートされる時間になっているという点です。つまり、山場がある授業は「確認する時間」から「変容する時間」へと質が変わるわけです。
さらに森さんは、山場のあるクラスでは子どもの姿も変わると語りました。「1つの考えで満足せず、友達を驚かせたい、この考えを伝えたい」という思いから、自力解決の段階で2つ目・3つ目の考えを持とうとする子が増えてきたといいます。なぜなら、教師が「まだ奥の手を持ってるんじゃないか」という期待感を子どもに与えているからです。
💡 森さんの言葉:「これまでは『分からない子が分かる』というゴールで交流を持っていた。しかしフォーマンセルを通して、『新しい考え方に触れていく』という視点も大事だと気づいた。教材研究の仕方も、授業への向き合い方も、ガラリと変わりそうです」
タイガさんの総括|授業を見る目、子どもを見つめる目
報告の最後に、チームリーダーのタイガさんが総括を述べました。その言葉が、フォーマンセルという研修の本質を的確に表しています。
💬 タイガさんの総括
「2ヶ月続けてきて、簡単には技術は変わらない。それは正直なところです。ただし、お二人の授業を見る目、子どもを見つめる目は本当に大きく変わったと実感しています」
「『なんちゃって子ども主体』というか、子どもから綺麗な意見が出たから授業がうまくいったとか、ペアで喋っていたから活発だ、と評価してしまう授業はたくさんあります。しかし、お二人はお互いの授業を見つめ合い、『ペアで喋っているように見えたけど中身はダメだった』『図を書いていたけど、こちらが書かせていただけだった』と、できていない部分にきっちりと向き合ってきた。そこが本当に素晴らしい」
とりわけ印象的なのが、「技術は簡単に変わらない。でも見る目は変わる」という言葉です。だからこそ、2ヶ月という短い期間でも、授業の質を根本から変えていく土台ができあがったと言えるでしょう。
まとめ|明日からできる算数 交流 授業の3視点
算数チームBの報告から見えてきた、明日から実践できる3つの視点を整理します。
- 聞き手を育てる問い返し:子どもの発言を、別の子に「今、何て言った?」と聞き返し、価値づける。これを何度も繰り返すことで、聞く必要性が生まれる。
- 止めるタイミングを見極める:「例えば」「もし〜だったら」という思考を子どもが口にした瞬間を、教師が見逃さずに止めて全体化する。
- 交流に山場をつくる:全員が同じ考えで安心した直後に、「実は他の考えを持っている子がいる」と切り込み、考えを揺さぶる瞬間を意図的に設計する。
とりわけ大切なのは、この3視点が互いに支え合っているということです。なぜなら、聞き手が育っていないと山場は成立せず、山場をつくれないと止めるタイミングも活きないからです。だからこそ、フォーマンセルのような集中研修で、複数の視点をまとめて磨く意味があると言えるでしょう。
