「想像力のスイッチを入れようの指導案を書かなくちゃいけない」「4つのスイッチを覚えて終わりになってしまう」「メディアとの付き合い方を、自分ごととして話し合わせたい」。5年生の国語を担当する先生から、よく聞く悩みです。
この記事では、光村図書5年下の説明文「想像力のスイッチを入れよう」(下村健一 文)の指導案を、子どもが主体的に話し合う授業を軸にまとめました。単元計画、本時(事例の挙げ方)の展開と板書例、自分の考えをまとめる学習へのつなげ方と、先生たちの実践を紹介します。

- 「想像力のスイッチを入れよう」の教材研究のポイント(3つのまとまり、事例と意見、4つのスイッチ)
- 単元の目標と評価規準
- 単元計画(全7時間)と、メディアとの関わり方をまとめる学習へのつなげ方
- 本時(事例はいくつ必要?)の指導案と板書例
- 5年生が主体的に話し合うための5つの工夫と、先生たちの実践例
この記事は、全国の小学校教員が実践を学び合うオンラインコミュニティ「授業てらす」が、公開されている指導案や先生たちの実践をもとに編集しています(2026年10月時点)。教科書の本文は掲載していません。
想像力のスイッチを入れようの教材研究
「想像力のスイッチを入れよう」は、ニュースキャスターとして活躍したジャーナリストの下村健一さんが、メディアから伝えられる情報との向き合い方を述べた文章です。身近な事例を挙げながら、情報を受け取る側が「想像力のスイッチ」を入れることの大切さを伝えています。
想像力のスイッチを入れようの組み立て
まとまりごとの「話したくなるポイント」
| まとまり1 | マラソン大会や図形の見え方の事例から、同じものでも見方によって受け取り方が変わることを示す ポイント:図形の見え方で、友達と答えがちがったのはなぜ? |
|---|---|
| まとまり2 | サッカーの監督をめぐる報道の事例から、情報を受け取るときに入れたい「スイッチ」を説明する ポイント:報道を見ただけで、決めつけていなかった? |
| 4つのスイッチ | 「まだ分からないよね」「事実かな、印象かな」「他の見方もないかな」「何がかくれているかな」 ポイント:自分がいちばん忘れがちなスイッチはどれ? |
| まとまり3 | 事例を使わずに、メディアと受け取る側それぞれの努力について、筆者の考えを述べる ポイント:ここだけ事例がないのはなぜ? |
この教材のいちばんの話し合いどころは、複数の事例がどのように筆者の意見を支えているかです。事例を四角で囲み、意見に線を引いて関係を整理すると、「なぜこの事例を選んだのか」「事例が1つでは足りないのか」と、筆者の書き方そのものを話し合えるようになります。
説明文の教材研究の進め方は、説明文の教材研究の仕方で、4年生の説明文は風船でうちゅうへ 指導案、5年生の物語は大造じいさんとガン 指導案で紹介しています。授業てらすでは、新潟大学附属新潟小学校の中野裕己先生による「想像力のスイッチを入れよう」国語授業公開&解説セミナーも開いています。
単元の目標と評価規準
学習指導要領(5・6年「C 読むこと」)の指導事項をもとに、単元名を「事例と意見の関係をおさえて、自分の考えをまとめよう」(例)として、目標と評価規準を次のように設定します。
| 観点 | 評価規準(例) |
|---|---|
| 知識・技能 | 原因と結果など情報と情報との関係について理解している。 |
| 思考・判断・表現 | 「読むこと」において、事実と感想、意見などとの関係を叙述を基に押さえ、文章全体の構成を捉えて要旨を把握している。 「読むこと」において、文章を読んでまとめた意見や感想を共有し、自分の考えを広げている。 |
| 主体的に学習に 取り組む態度 |
進んで事例と意見の関係をとらえ、学習の見通しをもって、メディアとの関わり方について自分の考えをまとめようとしている。 |
※学習指導要領 国語 第5学年及び第6学年の「知識及び技能」(2)ア、「思考力、判断力、表現力等」C読むこと ア・カ をもとにした例です。
単元計画(全7時間)
公開されている指導案では、6〜9時間で計画している例が見られます。ここでは、最後に「メディアとの関わり方について、自分の考えをまとめて読み合う」ことをゴールにした7時間の計画を紹介します。
| 次・時 | 主な学習活動 | 子どもが話す工夫 |
|---|---|---|
| 第1次 1時 |
ふだん見ているメディアを出し合い、全文を読んで初めの感想と学習計画をつくる | 「うわさを信じて失敗したこと」など経験を話す |
| 第2次 2時 |
文章を3つのまとまりに分け、事例と筆者の意見を表に整理する | 事例は四角、意見は線で区別し、ペアで確かめる |
| 第2次 3時 |
マラソン大会と図形の事例から、筆者が伝えたいことを読む | 図形の見え方を実際に試し、ちがいを話し合う |
| 第2次 4時 |
サッカーの監督の事例から、4つのスイッチを整理する | 「自分が入れ忘れがちなスイッチ」を伝え合う |
| 第2次 5時 (本時) |
事例の挙げ方と、事例のないまとまりの役割を考える | 「事例は1つでいい? 3つ必要?」と立場を決めて話す |
| 第3次 6時 |
身近な記事や広告を、スイッチを入れて読み直す | スイッチごとに色分けした付箋で考えを見える化する |
| 第3次 7時 |
メディアとの関わり方について自分の考えを書き、読み合う | 共通点・相違点・感想の順に伝え合う |
本時の指導案(事例の挙げ方)
本時は、筆者が複数の事例を挙げた理由と、事例のない3つ目のまとまりの役割を考える時間です。「事例は1つでも伝わる? 3つ必要?」とあえて選ばせると、5年生でも筆者の書き方を根拠にして話し合えます。
- 本時の目標:複数の事例と筆者の意見との関係を叙述をもとに押さえ、事例の挙げ方の効果について考えを伝え合う。
- めあて(子どもの言葉で):筆者が事例を3つ挙げたわけを考えよう。
| 段階 | 学習活動と主な発問 | 予想される子どもの反応 | 留意点・話す工夫 |
|---|---|---|---|
| 導入 (5分) |
①前時までの「事例と意見の表」をふり返り、めあてを確かめる。 | 「事例はマラソン大会、図形、サッカーの監督の3つ」 | 表を掲示し、事例と意見の対応を全員で確認する。 |
| 展開1 (10分) |
②事例をサッカーの監督だけにした文章を読む。 発問:この文章でも、筆者の言いたいことは伝わる? |
「伝わるけど、スポーツの話だけみたい」「図形がないと、見方が変わる感じが分かりにくい」 | 事例を減らした文章を教師が用意し、教科書の文章と並べて掲示する。 |
| 展開2 (20分) |
③立場を決めて、グループ → 全体で話し合う。 発問:事例は1つでいい? それとも3つ必要? |
「身近な例から始めるから、分かりやすくなる」「ちがう種類の例があるから、どんな情報にも当てはまると分かる」「1つでも、くわしく書けば伝わる」 | ネームプレートで立場を示させる。「1つでいい」の意見も認め、事例ごとの役割のちがいに目を向けさせる。 |
| まとめ (10分) |
④事例のない3つ目のまとまりを読み、事例の挙げ方の効果をノートにまとめる。 | 「事例で納得させてから、最後に筆者の考えをはっきり言っている」 | 次時に、実際の記事をスイッチを入れて読むことを伝える。 |
板書の例
- マラソン大会
- 図形の 見え方
- サッカーの 監督の 報道
- 身近な 例で 興味を もたせる
- ちがう 種類の 例で 広く 当てはまると 示す
- 最後に 事例なしで 考えを まとめる
板書では、左に筆者の事例、右に子どもが見つけた「事例の役割」を書き、真ん中に「事例はいくつ必要?」を置きます。最後に「読み手を納得させるための事例の選び方と並べ方」とまとめると、自分の考えを書くときにも事例を意識して書けるようになります。
5年生が主体的に話し合う5つの工夫
「わたしは、〜だと考えます。〜段落に『〜』とあるからです。」
「〇〇さんと同じで〜。でも、〜という点はちがって〜」
先生たちの実践例3選
実践1|事例は四角、意見は線で関係を見える化する(東京都練馬区の小学校)
東京都練馬区の小学校が公開している指導案(全6時間)では、文章を3つのまとまりに分け、3つの事例と筆者の意見を表に整理しています。事例は四角で囲み、意見にはサイドラインを引いて関係を目で見て分かるようにし、事例のない3つ目のまとまりの意味も考えています。考えを書いた文章は回し読みし、共通点・相違点・感想の順に伝え合っています。
教科書のコピーに、事例は四角、意見は線と決めて書きこませ、ペアで「この線の意見を支えているのはどの四角?」と確かめ合ってみましょう。
実践2|スイッチを入れて記事を読み、付箋で交流する(埼玉県の小学校)
埼玉県が公開している指導案(全9時間)では、単元名を「目指せ!情報使い!!〜筆者の下村先生に自分の考えを届けよう!〜」として、筆者に考えを届けることをゴールにしています。本時では、スイッチを入れずに読んだときの感じ方を確かめてから、スイッチを入れて記事を読み直します。考えはスイッチの観点ごとに色分けした付箋に書き、拡大シートで共通点や相違点を整理しながらグループで話し合っています。
実践3|筆者と制作した動画で、日常の情報に当てはめる(光村図書)
光村図書は、筆者の下村健一さんと共同で、教材の応用編となる4本の動画を公開しています。「まだ分からないよね?」「事実かな,印象かな?」「他の見方もないかな?」「何がかくれているかな?」の4つのスイッチを、身近な情報に当てはめて考える内容です。朝の会や帰りの会での視聴も勧められていて、授業後に日常で使う場面をつくるのに役立ちます。

よくある質問
Q. 想像力のスイッチを入れようは何時間扱いが多いですか?
A. 公開されている指導案では、6〜9時間で計画している例が見られます。学校の年間指導計画と、教科書会社の指導書で時数を確認してください。
Q. 4つのスイッチを覚えるだけで終わってしまいます。
A. スイッチを「知っている」から「使える」にするために、身近な記事や広告、学級でのうわさなどにスイッチを当てはめて読む時間をとりましょう。どのスイッチを使ったかを付箋で示させると、考えが見えやすくなります。
Q. 授業で実際のニュースを使うときの注意は?
A. 子どもにとって身近で、特定の人を傷つけない話題を選びましょう。事件や事故など心理的な負担が大きい話題は避け、学校行事の案内や商品の広告など、比べて考えやすい情報から始めるのがおすすめです。
Q. ワークシートや指導案に本文を載せてもいいですか?
A. 授業で使うために必要な範囲であれば、著作権法で認められています。ただし、学校のホームページなど、外に公開する場合は扱いが変わるので注意しましょう。

